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    nantonac64

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    漫画用シナリオ6

    【オリジナル漫画】『these stones』時計編 シナリオ6漫画用シナリオ


    [森の中。二人の影が背中合わせになり、あたりの様子をうかがっている。]

    These stones

    ???「大丈夫か?」
    ???「こちらは問題ない。しかし、」
    ???「武器が使えないのはいささか厄介だな。」
    ???「奴の攻撃が見えたのか?」
    ???「見えたというわけじゃないが、予測通りなら面倒だな、とは思っている」
    ???「今から正体を暴いてやるから待っていろ」

    [突然、影の一人……金髪の男の頭上に不定形の黒い塊がジャラジャラと音を立てながら現れる。影たちは散開し、その場から離れる。]
    [金髪の男は走りながら自らが持っている警棒のようなものについていたスイッチを押す。警棒の先からバチバチと音が立ち、火花が散る。金髪の男は黒い塊に警棒を向ける。警棒の先から電撃が迸り、黒い塊に直撃するが、黒い塊は電気を帯びたまま放物線を描いて二人の影がいた場所にぐしゃりと落ちる。一部が落ちた反動で塊から剥がれ落ち、無数の黒い玉となって飛び散る。]

    ???「おわぁあ」

    [影の一人、黒髪の男がそれを見て、自分の方へ飛んできた小さな黒い玉をとっさに避ける。]

    ???「なんつー調べ方してるんだ」
    ???「死ななかったからいいじゃないか」
    ???「いや、よくはねーよ! よくはないから!」

    [金髪の男は黒い玉に目を向ける。パチパチと音を立てて転がるそれは、あとから追ってきたもう一つの黒い玉が転がってくると、パチッ、と音を立てて先に転がってきていた玉と繋がる。]

    [冷静な顔でそれを見ている男の背後から一つの影が襲いかかる。足を振り上げて金髪の男に攻撃を加えてくるルッツ。それを避ける金髪の男。足先が通り過ぎた瞬間、シャンッっと音を立てて光る何かが金髪の男の長い髪の一房を攫う。]

    [黒髪の男は地面に横たわる黒い塊や、落ちた黒い玉がコロコロとある方向にゆっくりと転がっていくのを目の当たりにする。その先から、大きな不定形の黒い塊が空中に形成されていくのが見える。]

    [黒髪の男は警棒のような物のスイッチを切り替える。警棒の先端が変わり、黒い面が浮き出る。黒い塊が黒髪の男に向かって飛来する。黒髪の男は警棒の先を向け、起動スイッチを入れると、黒い塊は壁に当たったかのようにバンッと音を立てて不可視の何かにぶつかり、残骸となって勢いよく飛び散った。]

    [黒い玉を避けるために格闘していたルッツと金髪の男がその場から離れる。]

    [額に汗を浮かべる金髪の男。ルッツは優雅に姿勢を正し、立つ。ルッツが黒髪の男に目を向けると、黒髪の男の顔にも疲労が浮かび始めているのが見えている。ルッツは眉を下げ、困ったように苦笑する。]

    ルッツ「…………だから、取引をしましょう……と、ご提案させていただいたのです。」
    ルッツ「私達にしても、今後の為を考えれば……とは思いますが、」
    ルッツ「………出来うるならば、違う今後を検討したいものでして。」
    ???「それは、我々が一考するに足るものか?」
    ???「苦し紛れの一言なら、そちらにとっても続けたほうがいいのは目に見えているだろう?」
    ???「……私も多少の覚悟はしてこの場に立っているものでな」
    ルッツ「覚悟、ですか……」

    [ルッツは目を細める。その足元をコロコロと黒い小さな玉が同じ方向へ向かっていくつも流れていき、一つの塊を形成していくと、それは歪な大きな玉を作り出す。小さな手がそれを手に取った。]

    トポリ「………覚悟、ねぇ。」
    トポリ「ボクには分からないなぁ。」
    トポリ「そこまでしてボク達が」

    [ルッツがトポリの方へ顔を向ける。トポリはそれに気がつくと、そっぽを向く。金髪の男がルッツをじっと見つめる。]

    ルッツ「……………考えていただけるのなら、順番として私達の方から提供しましょう。」
    ルッツ「あなた方の目的はおおよそ見当がついています。」
    ルッツ「『端末』のことでしょう?」
    ルッツ「私共にも立場はありますので、大々的というわけにはいきませんが……いかがでしょう?」

    [ルッツは綺麗な微笑みを浮かべる。]

    ???「…………」

    [金髪の男は頭を振る。次の瞬間、金髪の男は横に飛ぶ。]

    ???「おぉおっ」

    [金髪の男は黒髪の男を抱えあげると、そのまま森の中に姿を消した。]

    ルッツ「………ふぅ、逃げられてしまいましたか」
    トポリ「追っとく? 簡単そうだけど」
    ルッツ「必要ないでしょう。恐らく彼らは今後、私達に接触してこないでしょうから。」
    トポリ「んんー……」
    ルッツ「おや、不満そうですね。」
    トポリ「だって、ボクの手の内が知られちゃったし……」
    トポリ「仕方ないって分かってるんだけど、持ち帰られるのも癪なんだよね。」
    ルッツ「それは申し訳ないことをしました。」
    トポリ「んや、いいよ、別に。」
    トポリ「それより、何か分かったんでしょ?」
    ルッツ「ええ、勿論。トポリさんのおかげです」
    トポリ「さっすがぁ! それで、どうなのさ?」
    ルッツ「彼らはおそらく……『テイオン教』の信徒たちで間違いないでしょう」

    [笑顔のまま、固まるトポリ。トポリの顔から笑みが消える。]

    トポリ「……ふーん、そう。」

    [ルッツはトポリを見る。]

    トポリ「………でもなんでそんなのがここにいるのさ?」
    トポリ「ボクら、恨みを買うようなことしたっけ?」
    ルッツ「関係ないからこそここにいる……」
    ルッツ「とは考えられませんか?」
    トポリ「それはまた、何でさ?」
    ルッツ「私達が誰かのささくれにイタズラをしてしまったから……という妄想はいかがでしょうか?」
    トポリ「個人的な恨み?」
    ルッツ「……かと。」
    トポリ「…………よりわからないなぁ。」
    ルッツ「………私に考えがあります。一先ず戻りましょう。」
    ルッツ「それに……」
    ルッツ「血の匂いでも嗅ぎつけられたら、後が大変ですよ?」
    トポリ「げ……」
    トポリ「突然お風呂が恋しくなったよ……」
    ルッツ「……………」
    トポリ「どうしたの? まだなにか気になることがあったりする?」
    ルッツ「…………」
    ルッツ「いえ、どちらにせよここでは答えが出ないことです。」
    ルッツ「………全く『ノムレス』とは、どこまでも厄介ですね。」
    トポリ「? ………」


    [場面変更。森の中を進むイーハイ。その顔にはある種の険しさと緊張が浮かんでおり、いつもの軽薄さはない。抜き身の刃を手に構えて歩き続けている。やがてその足元に黒い斑点が現れる。更に進めばそれは夥しいほど広がる黒いシミになっていく。あたりの木々は所々割られ、不自然な穴を形成しているものすらある。やがてイーハイは一つの場所にたどり着く。もはやイーハイの足元は黒一色になっていた。イーハイがゆっくりと顔を上げる。]
    [イーハイの視線の先には、人の体に刃を突き刺したまま、佇む影が一つ。その人物はその刃を至極適当に振り、物言わぬ躯を投げ捨てた。そして肩を落とすと、躯に近寄り、徐ろにその躯に出来た穴に手を突っ込む。ブチブチと音を立てて、何かが取り出された。その手には一つの、その影の手のひら程の大きさの石が握られている。]
    [影はそれを一瞥すると、スッと自らの衣服についたポケットにしまう。影が立ち去ろうとしたところを見て、イーハイは睨みつけるような顔をした。]

    イーハイ「待て」

    [影は止まらない。]

    イーハイ「待て!」

    [影はようやく止まる。酷くゆっくりとした動作で、それはイーハイの方へ向いた。]

    イーハイ「アンタを……逃すワケにはいかないんだ。」
    イーハイ「『ソレ』、オレにくれるかな?」
    イーハイ「……兄さん」

    [イーハイの問いかけに、一瞥をくれる影。表情を変えないまま、影は再び前を向いて歩き出そうとする。]
    [イーハイの手が震える。イーハイは手に力を込める。そして両の手に持っていた得物を逆手に持ち変えると、影に向かって突進した。イーハイの刃が影の背に届くかと思った瞬間、その刃は突如現れた別の刃に防がれた。]

    イーハイ「ッ」

    [イーハイは咄嗟に距離を取る。影は後ろ姿のままだが、刃を抜き、逆手に構えていた。影はゆっくりとイーハイに体を向け始める。そして、自分の獲物を握る手を見つめてから、再びイーハイを見る。胡乱げな目がイーハイを捉える。]

    イーハイ「……………」

    [イーハイはもう一度構える。しかし、その手は震えている。]

    ???「………足りねぇ。」
    イーハイ「………」
    イーハイ「は…?」
    ???「足りねぇ。」

    [影の男がニヤリと表情を歪める。]

    ???「牙が足りねぇ。」

    [その言葉と共に、影の男はイーハイの懐まで入り込んでいた。次の瞬間、影の男の側面から何者かが何かを振り下ろす。一撃、二撃、三撃。影の男は奇襲してきた人物の攻撃を難なく受け止める。奇襲を行った人物はイーハイに攻撃が向かないことを悟ると後ろに飛んで距離を取る。影の男の目線はその人物に向けられる。そこに立っていたのは、薙刀を構えたナギサの姿。ナギサは冷静な顔で、影の男に薙刀の切っ先を向ける。ナギサの瞳を、影の男は見ている。ややあって影の男はまたニヤリと不気味な笑みを浮かべる。]

    ???「……ハッ、女の方が牙を持つなんてなァ。」
    ナギサ「…………畜生には畜生が相手をして欲しいものですが、」
    ナギサ「躾は人の手が必要のようですね」

    [影の男はナギサの言葉には反応せず、未だ震える腕で武器を構え、立ち尽くすイーハイに目を向ける。]

    ???「────二人でも足りねぇ。」

    [ナギサの手に力がこもる。]

    ???「まだ育たねえのか。」

    [イーハイは口を引き結ぶ。]

    イーハイ「………今更、兄さんに……」
    イーハイ「いや、お前なんかにコトバが通じるなんて思ってないよ。」
    イーハイ「だから尚更、『ソレ』を持って行かせる訳にはいかないんだ………!」
    イーハイ「オカシイと思ったよ。いくらなんでも『回収が早すぎて』さ……」
    イーハイ「お前なんだろ? ……ルッツさんに回収を命令したのはッ」

    [イーハイは叫びながら、武器を持つ手に力を込める。影の男は冷めた目でイーハイを見ている。ややあって、影の男は飽きてしまったようにあくびをすると、己の武器をしまい込んで、二人を無視して歩き出してしまう。]

    イーハイ「……ッ!」

    [飛び出そうとするイーハイ。それを止めるナギサ。腕を広げ、イーハイを牽制する。]

    イーハイ「ナギサちゃ……」
    ナギサ「文句ならその手の震えを止められたらにしてもらえますか」

    [目を見開くイーハイ。ナギサの表情は、辛そうに歪んでいた。そして、ナギサの手は片や酷く擦れて赤くなって、もう片方は血が滲んでいることにイーハイは気がついてしまう。フラフラとイーハイはナギサに近寄ると、その顔をナギサの肩に埋めて、ゆっくりと腕を彼女の体に回す。]

    イーハイ「……ごめん、」
    イーハイ「…………ごめん、ナギサちゃん……」

    [ナギサの赤くなったほうの手がイーハイの頭を撫でる。]

    ナギサ「本当に、貴方はバカです。史上最強に、バカです」
    イーハイ「……うん」
    ナギサ「今回は私達が間に合わなかった。そう考えましょう」
    イーハイ「…………」
    ナギサ「チナミが次の情報を掴んでいないか確かめましょう。どちらにせよ、時間がないことだけは確かなんですから」
    ナギサ「私達はようやく腰を上げたんです。しっかりしてください」

    [ナギサはイーハイの背中を強めに叩く。]

    イーハイ「……痛い。」
    ナギサ「……まったく。こんな時にこんなだから貴方はモテないんですよ」
    イーハイ「………だったらさ、ナギサちゃんが貰ってよ、オレのこと」

    [ナギサはイーハイの頭を撫でながら、悲しそうに微笑む。]

    ナギサ「死んでも嫌です」


    【六話終了】




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