短歌本 解説無粋かもしれませんが、作品の中から選んで少々解説を書きました。
読み終わった後に見ていただけたら幸いです。
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良妻と軟派男と〜
今回、短歌作ろうと思ってテレビシリーズを一気見したときに、高倉家の日常パート、会話の流れが同じパターンだな……と思ってしまったんです。
役割を決めて「家族」してたんだなと思ってしまって(それも彼らの努力のかたちなので、否定したいわけではなくて)必死だったんだな、と思いました。
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やってしまうつもりじゃなかった〜
4話で晶ちゃんが人工呼吸の後「やってしまった〜!」って言うの、なんで「やってしまった」って言い方だったのかな、って思ったんです。「なんでこんなことに!」とか「こんなはずじゃ!」とかじゃないのかなって。晶馬的にはただのターゲットのはずが近づき過ぎたから「やってしまった」なのか?と思い作りました。
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隣より向かい合うのが恋人のよう〜
多蕗とゆりさんと食事する苹果ちゃん、多蕗さんの隣の席のはずですが向かいあってるふたりの方がやっぱり恋人に見える……。その後、晶馬と苹果もずっと列車で隣同士ですが、23駅や24駅で向かい合うんだよなあと……。このシーン、苹果ちゃん、プロジェクトで晶馬抜きでひとりで行動するのけっこう久しぶりでは?と思って彼女の胸中を勝手に想像してしまいました。
10ページ
指が触れ囁き落ちて離れてく〜
10話の陽毬ちゃん、お姉さんみたいで冠葉じゃなくてもドキッとしちゃう、と思って。
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同じもの 見ているふたり〜
さねとしと桃果の歌が作ってみたくて考えました。
ふたり、で一旦切れる、と考えていたのですが、
目指してる、で切って同じものを見られるように「目指してる」のはさねとしだけで、ふたりが目指しているものは「反対よ」ときっぱり断ずるのは桃果、というイメージでも読める!などと思っていました。
15ページ
「偽物」に手を振り上げた〜
現場から降りてきた多蕗に対して、ゆりさんずいぶん穏やかに話をしているな、と思ったのが作ったきっかけでした。会うなりもっと怒っても不思議じゃなかったのに。騙されたことも、自分だって危害を加える気だっただろうと図星を刺されたこともそこまで決定的ではなかったと思うのですが、その後思いっきり引っ叩いたのは、多蕗が言ったことが相当許しがたかったのか、と思って、だとするとそのポイントは「偽物」なのかなって。
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むき出しで赤く色づくひざ小僧〜
20話の、幼い陽毬がぼうっとしているところのカットがとても印象的で。足寒そうと思ってそれだけで彼女の境遇が推察できるのすごいなって思います。
「き」の音を重ねたかったらしい。
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目に見えぬ 美しさによって立つ〜
真砂子が冠葉を守るためにおとりになり、その後モノローグで訥々と語るとき、綺麗なふくらはぎのラインとその輝きがとてつもなく忘れがたくて!タイツで歌を読みたいってあれこれ考えました。
21ページ
箱の中触れ合えなくて〜
「ずっとお前をこうしたかった」、どういう意味なんだろう?抱きしめたかったのか、それともいっそ銃で撃ってやりたかったなのか、って何度も考えたのですが、今回見直していて、冠葉と晶馬ってあの箱に入れられている間、励まし合うためにできたことって話をすることだけだったんだな、と思ったんです。肩を抱くことも、手をつなぐことも、温もりを分け合うこともできない。手を伸ばしてようやっとりんごを分け合えるギリギリのところ。だったら「ずっとこうしたかった」は抱きしめたかった、って考えてもいいのかなあと思いました。
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白米とカレーのルーを分け合って〜
カレーって、ひとつの鍋に入っているルーとひとつの釜に入っている白米を分け合って食べる料理だよなーって思いました。カレーはピングドラムのシンボル的な料理だけど、なぜカレーなのかっていうと「分け合う」からなのかも、と。
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大スキよ〜
ピングドラム、私「選んでくれてありがとう」っていう言葉は「私を選んでくれてありがとう」だと思ってたんだけど今回見て
「私のお兄ちゃんになることを選んでくれてありがとう」になるのかもな〜って思ったけどテレビシリーズのときからそうだったかも〜とか考えてる
……という映画を見た後のツイートを短歌にしました。
ぴたっと文字がハマったときに「来た〜!」となって絶対これがタイトルだ!と確信できて嬉しかったです。
表紙、いつも印刷会社さんにデザイン頼んじゃったり使えるものを使ったりしちゃうのですが、表紙で「あいしてる」つくれる〜!と思いついてしまったのでどうしてもやりたくて、初めて自分で表紙を作りました。印刷会社さんにめちゃくちゃ迷惑かけたけど、楽しかったです。
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潮満ちて波押し寄せる〜
前編のポスター大好きなんですが、前編のラストの方を見直していて冠葉が浸かっている海の表現を見ているうちに水は彼の思いの深さなんだ……と思ってモノローグに胸を打たれてしまいました。
普通に短歌として作ったなら、あまりに情熱的で気恥ずかしくて詠めない歌だけど、ピングドラム短歌としてなら詠める!と思って。
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最後の日〜
最終回を見た後、泣くこともなくただただ呆然としてしまって、気がつけば朝だったのを覚えています。