高二と中二「ビッチなんだってさ」
その単語が月島の耳に飛び込んできたのは、唐突だった。あまりにとんでもない響きだったので、思わず振り返ってすれ違った二人組の背中を見た。月島は体育館倉庫に行く途中で、校舎一階から体育館に続く渡り廊下に出るところだった。
「頼めばしゃぶってくれるんだって」
「でも男なんだろ?」
「綺麗な顔してんだよ。んで、めちゃくちゃ上手い。男だからこっちも遠慮しなくていいし……ほら、女と違って後腐れないわけ」
「なるほど……」
「だから放っておこうぜ。妙に助け舟出しても余計なことかもしれないし」
話しているのは、陸上部の三年生だ。名前は知らないが、ジャージの背中には大きく「帝国大学第七付属高校陸上部」と縫い取りがある。
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