「なんだか妙に散らかってるね、この部屋」
やってきたばかりの高杉社長を部屋に連れてきたところそう言われた。
仕方がない、バレンタインが終わったばかりなのだから。
チョコレートはもちろん様々なお菓子やお返しだってまだ片付いていない。
雑に扱ってはいないけれど置き場がなくてまだまだ部屋の一角に積みあがったままだ。
「ちょっと忙しくて片付けが終わってないんですよ」
「ふーん……面白そうなものもあるなぁ……」
「うわ、勝手に触らないでくださいね!」
楽しそうに手を伸ばすのに慌てて声をかけると、悪戯が見つかった子供の様にぱっと手を引いてホールドアップの仕草でその場を離れる。
まだそこにはいろいろ危険物も多いのだ。
武器があれば爆発物もあるし呪いだってある。
カルデアにきたばかりで強化も何もされていない状態ではどうなるか分からない。
興味だけで動かないでください、と言いつつ椅子をすすめて、お茶とお菓子を用意する。
高杉社長は名残惜し気にバレンタインの産物を眺めながらも大人しく椅子に腰かけた。
「あんな面白そうなのになぁ」
ちらりと寄せられた視線の意味を無視して、向かいに座ってお茶を飲む。
「今は駄目ですよ」
「……今は?」
聞き返された言葉に口を滑らせたことに気付く。
失敗したと思ったけれど、まだ気付くことはないだろう。
「そうですね、一年後くらいなら」
「一年? 何かあるのか?」
そう一年後であればそのプレゼントの山の意味も分かるだろう。
ついでに今目の前にあるお茶菓子の意味も。
運が良いのか悪いのか、なぜか一つだけ余ってしまい自分で食べてしまおうとしていたチョコレート。
来年、彼は気付くのだろうか。
とりあえずは召喚されたばかりの皆に聞くように話を始める事にした。