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    pheas357

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    ↓の続き(完結)
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    例によってカプ妄想はご自由に(*'ω'*)

    夜になって、付き添い用のベッドに横になったものの、どうしても眠れずにダツラは何度も起き上がってネジキの様子を見ていた。ネジキはあれからずっと目を覚まさない。呼吸は穏やかになったものの、逆に身動きひとつせず、あまりに静かに眠っているために、時折息が途絶えてしまったかと心配になるくらいだった。
    明け方近く、ダツラもさすがに疲れてきて少しうとうとしていたが、夜が明けきる前に、妙な気配に目が覚めた。
    隣を見ると、ネジキが昨夜より浅く荒い息をしている。痛むのかと思い、そっと握った手の熱さに驚く。昨日はむしろ冷たすぎるくらいだったのにと、とにかく焦って助けを呼んだ。
    処置中、声をかけても点滴の針を刺しても、あいかわらず何一つ反応を返さないネジキを見て、泣きそうになる。
    再び横になるがやはりどうしても眠れなかったダツラは、一度起き上がるとベッドを接するように移動させた。体を横向きにして両手を伸ばし、ネジキの右手を包み込むようにして握ってから目を閉じる。
    それから何度も、少し眠りかけて、ネジキの意識が戻る夢を見ては、目が覚めて現実を突きつけられるという事を繰り返した。丸一日以上眠り続けるネジキは、それでも再び日が暮れる頃には熱も下がっていた。その事に安堵する一方で、夜になる頃にはダツラ自身すっかり疲れ切って憔悴していた。昼間は自分の食事を摂ったりもしていたが、今では動く気力もなく、ただネジキの手を握ったまま横たわっている。
    少し寝よう、と思うが、それでも眠るたびに訪れる同じ夢と現実の繰り返しに、眠る気力すら奪われる。
    突然、意識も体もスイッチが入ったようにはっきりと覚醒する。眠っていたのか、疲れて気を失っていたのか、起きてはいたが何も感じなかったのか自分でもわからなかったが、時計を見ると既に日付が変わりかけていた。
    ダツラの目を覚ましたのは、手を握られる感触だった。手はそのままに、肘だけついて少し上体を持ち上げる。ネジキが目を開いていた。

    起きたのか夢を見ているのかわからなかったが、何かに闇の奥から意識を引き上げられる。
    それでも頭の中はまだ濃い霧がかかったようで、思考も感覚も一切の働きを止めていた。
    目は開く事が出来たようで、病室の天井が網膜に映るが、ただそれだけで何も感じず、自分がどこにいるのか、そもそも自分が何者なのかもわからなかった。何もわからない、という事さえわからない。
    不意に視界が遮られる。天井の代わりに、人影が映る。何か声を出しているようだった。
    「……だつらさん……?」
    頭が理解するより先に口が動く。
    瞬間、言葉に引かれるようにして、全ての記憶がよみがえった。頭の中の霧もきれいに晴れて感覚や思考を取り戻す。
    改めて胸の周りの痛みを自覚し、同時に自分の声があまりにも弱々しくかすれている事に驚く。
    「ネジキ、具合はどうだ?痛むか?」
    「……さっきよりは、よさそうです……」
    一瞬ダツラの表情が少し変わる。そりゃあこんなに弱々しい声で大丈夫と言われても説得力は無いだろうと思う。とはいえ、少しはましになっている事は事実だった。
    起き上がろうとしたが、体に力を入れるとまだ痛むために、結局またそのまま横になる。ダツラがベッドのスイッチを押して上体部分を起こしてくれた。そのまま飲み物も渡される。
    自覚していなかったが、だいぶ喉が乾いていたようで、一気に飲みきってしまった。
    「……ありがとう」
    先程よりはしっかりした声が出る。
    「あのな、ネジキ……」
    「……?」
    「さっきと思ってるかもしれねえけど、おめえ、1日以上ずっと寝てたぞ。だから昨日……というより、日付の上ではもうすぐおとといだな」
    驚いて壁の時計を確認する。カレンダーの部分は確かに記憶から日付が変わっていた。
    「ワーオ……」
    思わず口走ったネジキを見て、ダツラが笑い出す。
    「今からじゃあ難しいかもしれねえけどな、もう1回、朝まで寝てな」
    ネジキのベッドを元の状態に戻してから、頭をそっと撫でる。
    触れる手の心地よさに一度目を閉じたネジキが、再び目を開いて、右手でダツラの手を握った。
    「ダツラさん……」
    泣きそうな顔と声に、ダツラは空いた方の手でネジキの手を握る。
    「痛むのか?」
    「…………」
    ネジキは首をふってから、握る手に力を入れる。
    「あの……、……ここで、ずっと、一緒にいて……」
    泣き声で言いながら目を閉じたネジキを、改めてもう一度撫でる。
    「大丈夫、おれがついてるからな」
    片手でネジキの手を握り、もう片方の手で、たしかに眠ったと確信するまで、ダツラはネジキの頭を撫で続けた。先程までとは打って変わって、穏やかな顔で眠るネジキの姿に、一瞬『まるで子供みたいだ』と思った。
    そして、本当にまだ子供なのだと再認識する。トレーナーとしてどれだけ一流クラスの実力があろうと、人間としては子供だと、この2日ではっきりと思い知らされた。
    布団をかけ直してやろうとしたところで、思い立って傍らに置いていた帽子を手に取る。これなら軽くてそう負担にもならないだろうと、ネジキの胸の上に乗せてから布団をかける。
    もう一度そっと頬に触れてから、ダツラも寄せたままだったベッドに横になって目を閉じる。
    そのまま片手を伸ばして、そっとネジキの手に重ねたかどうかのうちに、ダツラも深い眠りに落ちていく。最後にほんの一瞬思ったのは、明日の朝もしも2人同時に目が覚めたら面白いな、だった。
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