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    pheas357

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    pheas357

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    前に出した初対面であいさつとして南に背中叩かれる北(話はつながってません)

    時系列的にはマス初期なので修練と大修練の担当。

    最初は特にカプ意識してなかったけど、後半はちょっと南×北っぽいかもしれない。

    パシオに招待されて、その時そこで初めてダツラとネジキは顔を合わせた。いずれは他のメンバーも呼ばれるだろうが、今の時点でここにいるフロンティアブレーンはこの2人だけ、しかもどちらも肩書はファクトリーヘッドという事で、互いにまあとりあえず挨拶くらいしておくか、といった気持ちだった。
    「はじめまして……」
    「おう、よろしくな」
    笑いながら、豪快ともいえる勢いで背中を叩かれて、ネジキは思わずつんのめりそうになる。
    「悪い、悪い」
    相変わらず笑いながらも今度はそっと触れられる。
    「しっかし細いなあ、ちゃんと食ってるか?」
    「……食べてます……」
    背を少し縮こめるようにしながら、普段より幾分低い声で答える。
    『むー……』
    これはなんだか苦手なタイプの相手だ。
    あまりあからさまに避けてしまうのは失礼だろうが、出来るだけ自分からは関わらないようにしておこう、とネジキは思った。

    そのつもりだったのに、それからしょっちゅう、様々な場所にダツラが居合わせる。常にいるというわけではなく、特に自分がいるところを狙って来ているようでもなく、もちろんネジキはなるべく会わないようにしているのだから、実際には偶然の範疇だろう。意識しているからいれば目について、よく会うように感じているだけだとは冷静に考えられていた。
    とはいえ、会えばまた豪快に背を叩かれる。一応常識的な範囲内でTPOは弁えられていて、実害はないといえばないのだが。
    日常になるごとに、ネジキも次第に慣れていく。単に諦めているだけなのかもしれないが。少なくとも意識してダツラを避けるような事は次第に少なくなっていった。
    とはいえ、お互いに積極的に探してまで一緒にいようとするわけでもなく、関わるのはあくまで偶然居合わせた時に限られていた。

    ポケモントレーナーにとって、主な収入源はバトルの賞金や道具の売却である。それはパシオでも例外ではなかった。ここだけで生活が成立するように町も作られて様々な店が並んでいたが、そこで買い物をするためにはやはり賞金などで稼ぐ必要があった。
    更に、野生のポケモンが存在しない以上、自分のポケモンを鍛える為には他のトレーナーと戦うか強化用のアイテムを使うしかない。
    野試合は禁止されているわけではなく、互いが合意すれば自由に行って良いとされていたが、いかんせんここに集められたのはトレーナーばかりである。慣例通りに「目と目が合ったら」などと言っていてはキリがないと、相応の実力さえあれば通貨やアイテムを安定的に得られるバトル施設が用意されていた。
    そして、そこでの相手役として、ジムリーダーや四天王といった各地方の実力者が集められた。ブレーンであるダツラとネジキも呼ばれ、それぞれ修練と大修練にと配属先が決定される。
    時間の制約がほとんどなく、挑戦希望者がいる場合いつでも呼び出されるダツラに対して、ネジキは1週間に1度だけ、決まった時間だけ入っていればよいという事で、少しは楽なんじゃないかなーと、初めに条件を聞いた時にはまだ軽く考えていた。

    話を聞いただけのイメージと現実が違っているというのはよくある事で、ネジキもすぐにこちらの方がきつい仕事だと思い知る事になった。
    ダツラのところへは比較的初心者から中級者になったくらいのレベルの挑戦者が散発的に訪れるのに対して、ネジキのところへは初心者からベテランまで、しかも制限時間内に間に合わせようと、絶える事なく集まってきた。
    思えばブレーンとしても、ある程度勝ち抜かなければ挑戦権を得られないため、待っている時間の方が長かった。1週間に1度だけとはいえ、その時間だけはこれまでに経験のないほどの連戦を強いられる。
    終わったら寄り道の一つもせずに宿舎に戻り、各部屋に備え付けの回復マシンにドータクンの入ったボールをセットする。それだけは決して怠る事はなかったが、あとは何をする気力も体力もなく、倒れ込むようにベッドに入るだけだった。

    その日、稼働時間が終わった時、ネジキはどういうわけか普段よりずっと疲れていた。挑戦者の数が多かったのか、強いトレーナーばかりが集まったのかはよく分からない。初めのうちは面白がって「今日は何人来るかなー」などと数えていたりもしたのだが、あまりのハードさにすぐそれどころではなくなってしまった。
    いつもならまっすぐに宿舎に戻るところだったが、すぐ近くだというのに、そこまでの移動すらなんだか億劫だった。
    今日は先に少し休んでから帰ろうと、自動販売機で飲み物を買ってから控室に向かう。休憩コーナーのテーブルに飲み物を置いてから椅子に座ったが、その後、開封した記憶はない。

    日付をまたぐ形で入っていたダツラが今日の分は終わったと控室にやってきて、そこで椅子に座ったままのネジキを見つける。こんな時間に残っているものなのかと思いながら、そういえば最近はあまり顔を合わせる機会がなかったなと思う。
    声をかけてみたが反応が返ってこない。近付いて肩に手をかけた瞬間、上体が傾いてダツラに向かって倒れてきた。
    「おい!ネジキ!」
    慌てて支えながら声をかけ、肩を揺さぶる。
    「……ふゃ?」
    ネジキが焦点の合わないままの目を開いた……が、すぐにまた閉じてしまう。
    何事かと焦ったが、落ち着いてよく見るとどうもただ眠っているだけのようだ。熱も無く、呼吸や脈も正常そうだった。
    何人かと話した事があるが、屈強な大人でもなかなかハードな日もあるらしい。
    『体力なさそうだもんなあ……』
    むしろよく時間中はしっかり勤められているものだと思いながらとりあえず他の椅子も持ってきてせめて上体だけでもと寝かせてやる。
    急いで帰り支度をしてからもう一度ネジキを起こそうと声をかけたり軽く揺さぶってみるが、少しは反応するものの目を覚ましそうな気配はなかった。
    仕方なく、宿舎に連れて行こうと抱き上げる。このままここで寝ていては風邪をひいてしまうかもしれないし、疲れもろくに取れないだろう。
    自分より体が小さい事はわかっていたが、持ち上げた時の軽さに驚く。しっかり触れてみると、思った以上に細かった。一緒に食事した限りではそこまで小食という印象もなく、栄養バランスも気を遣っているようだったが、体質なのか生活習慣なのか。
    起きないならばと、起こさないように気を付けながら、ゆっくりと優しく運んでいった。荷物の中に鍵も入っているだろうが、さすがに少し躊躇われたので、自分の部屋に連れて行く。ベッドは十分大きかったが、疲れているなら広くとった方が良いだろうとネジキを1人で寝かせて自分はソファーに横になった。こうなるとダツラ側は白衣くらいしかかけるものが無かったが、建物内は空調が効いているのでどうにかなるだろう。

    底から引き上げられたような意識が、半分ほど覚醒する。どうにも重たくてこれ以上は持ち上がりそうにないまま、夢と現実の境目を漂い続けていた。
    知覚出来るのは綿雲の上にいるような浮遊感と、それとは裏腹の体の重さだけだった。
    このまま起きようとするようにまたわずかに意識が浮上したが、まぶたも重すぎて持ち上がらない。目を開く事を諦めると、体の重さと連動するように、意識も重くなり、再び沈んでいった。
    そんな中でも浮遊感は最後まで残り続けるという、奇妙な感覚だったが、そこに疑問を抱くほどには頭も働いてはくれなかった。

    どれほどの時間がたったのか、再び意識が浮上する。少しずつ、体の感覚も戻り始めた。
    開いた目にまずは天井が映る。次第に意識が鮮明になり、頭が働いてきたところで、昨夜はどうやって帰ってきたのかと思う。いつもはどれだけ疲れていても帰り道の記憶くらいはあるのだが、今日はどうやっても控室に戻ってから先の記憶が呼び出せない。
    記憶も残らないほどに疲れていたのかと思いながら起き上がろうとして、部屋の様子がおかしいと気付く。
    宿舎は各部屋の基本的な内装や備品が統一されていた。そのため、天井だけを見ていた時にはわからなかったのだが、周囲に目をやると、明らかに自分の部屋ではなかった。まさかうっかり他の誰かの部屋に間違えて入ってしまったのだろうかと、一気に目が覚める。
    あわてて飛び起きてベッドから飛び降りて、床に立ったところで、一瞬眩暈がした。少しふらつきつつ、なんとか堪える。
    「おう、起きたか」
    「ダツラさん……っ?!」
    声をかけられただけで飛び上がりそうになり、慌ててベッドの横に置いてあった荷物に手を伸ばした。
    「ごめんなさい……すぐ帰ります……!!」
    そう言って足を踏み出そうとした瞬間、世界が揺れる。一度持ち上げた荷物が再び床に落ちた。ほんの一瞬、記憶に隙間ができる。
    次に気が付いた時には、ダツラにしっかりと抱きとめられ、支えられていた。ますますパニックになったネジキは離れようとするが、背中をダツラの両手にしっかり押さえられている。どうすればいいかわからなくなって、声も出せず、ネジキはただ全身をこわばらせてその場で固まる。
    「……フラフラじゃねえか、もう少しここで休んできな?」
    ダツラの右手がゆっくりと優しくさするように背を撫でる。最初のパニックは収まりつつあるものの、まだ冷静にはなれずに体も硬直したままだったが、次第に手の優しさが心地よくなる。
    緊張が解けて力の抜けた体をすっかりダツラに預けきる。一度完全に目が覚めたと思ったばかりなのに、なんだかまた眠くなってきた。
    抱き上げられて、もう一度ベッドの上に戻される。半分眠りかけていたネジキだったが、抱き方がいわゆるお姫様抱っこだった事を認識した瞬間に再び覚醒する。ベッドに寝かされたものの先ほどとは別方面にパニックになり、どう反応を返せばいいのかわからないまま起き上がろうとした。……が、ダツラに肩を押さえられて動けなくなる。
    「だから、無理すんなって」
    いやおとなしくしているつもりだったのにダツラさんがと脳内でぐるぐるするが、動揺しているせいか疲れているのか口に出す気力はない。
    とりあえず力を抜くと手は離れていったが、そのままの体勢というのもなんとも気まずくて、寝返りを打つように体を反転させた。ダツラに他意が無さそうなのがまた気まずい。お姫様抱っこというのもただ呼び方だけで、ダツラにしてみればきっとベッドに上げて横にさせるのに効率の良さそうなやり方を選んだだけだろう。自分が勝手に気まずくなっているだけだと自覚していて、その事にまた気まずくなる。
    とにかくダツラの存在を一旦遮断して脳内をリセットしてしまおうとうつ伏せになったのだが、そのままで動かない、というより動けないネジキをどう見たのか、ダツラが今度はベッドの端に座って、ネジキの背に手を当てる。そのまま一定のリズムでとんとん、と軽く叩かれた。この体勢はかえってまずかったかと思いながら全身をこわばらせる。だいたいこれは親が赤ちゃんや小さな子供にする事じゃないか、いくら自分の方がずっと年下とはいえ……と少しばかり不満も芽生える。
    一方で、横になった事で力を抜きやすくなった体に、ダツラの大きくて優しい手からちょうどいい心地よさを注ぎ込まれる。
    「んー……」
    意識も押し流されるようで、ネジキはついに全ての抵抗を諦めた。力が急速に抜け落ちて、その分を温かさに満たされていく。
    「       」
    最後に耳を満たした温かさが、その時間、ネジキの最後の記憶だった。
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