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    pheas357

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    pheas357

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    南×北っぽい。

    元々は工場長の日に突発で出そうと思って書き始めたけど間に合わなかったやつ。
    どっちかというと北メインなのでせっかくだから今日出す(*'▽')
    例によって不穏な目にあってる

    元ネタ↓
    https://www.uta-net.com/song/117438/
    フォロワーさんからいただいたイメソン(ありがとうございます✨✨✨(*'▽')✨✨✨)があまりにネジキだったので(*'ω'*)

    ダツラがホウエンからシンオウに来るというので、聞いてからなんとなくネジキはそわそわしていた。普段からちょくちょく連絡は取り合っていたが、いかんせん拠点が遠く、直接会う機会はなかなかない。
    近くの駅に迎えに行くことにしていたが、出かける時にうっかり通信機を忘れてしまった事にしばらく進んでから気が付く。それでも大して気にせず、進み続けた。
    列車の時刻は決まっているというのに、なんだか気が急いたネジキは近道をしようとする。迂回していく道路をそれて雪の積もった林の中へ入り、駅の方向へまっすぐ突っ切るコースをとった。
    雪が深くて道らしい道もないが、人間の管理の手がしっかりと入り、季節を問わず普段からフィールドワークに来る事もあれば近所の人が散歩している事もある。決して油断はしていなかったが、そこまで危険な場所とも思っていなかった。
    その日、少し風が強かったものの、朝から晴れていて天気についても心配はいらないと考えていた。
    だが、それなりに気を付けていたことがかえって裏目に出る。滑ったり吹き溜まりを踏み抜いたりしないようにと足元をずっと見ていたネジキは、陽光の反射する雪に少し視界がおかしくなった。
    もちろんそれは酷くなる前に対処した。顔を上げて雪から目を逸らす。林の中ということで、周囲は木々に囲まれていた。木の色を見て少し目を休めようとする。これにはそう時間もかからないので、本当ならこの時足を止めるべきだった。
    直前に足元がよく見えていなかった事に加えて、目線を上に向けたために、すぐそばにあった段差を見落とす。
    勢いよく片足が落ちてバランスを崩す。立て直せないままその先の斜面を滑り落ちた。決して急ではなかったが、表面の雪が固く凍り付いていて手足をかける場所が無く、勢いをつけて下まで滑っていく。しかも今いるのは林の中である。先に木がはえていて、このままではぶつかってしまう。
    とっさに両足を前に突き出して木の幹を蹴るようにして止める。あまり運動神経がよくない事を自覚していたが、これは上出来だった。
    だが、それでも無事に済んだわけではなかった。段差を踏み外した時か、斜面を落ちる時、左足を捻ったかなにかしたらしい。木に足が当たる時、ネジキはこのスピードで木を蹴ったらこれくらいの衝撃があるだろうとしか考えていなかった。だが現実にはケガをした足を勢いよくぶつけてしまい、予想出来なかった激痛を味わうことになってしまった。あまりの痛みと衝撃に気が遠くなる。次に気が付いた時には、雪の上に仰向けになっていた。時刻のわかるものを持っていなかったためにどれほどの時間がたったのかはわからない。ただ、太陽の位置は見てわかるほど動いていなかった。もしかしたらほんの一瞬だったのかもしれない。
    改めて体の状態を調べてみる。捻った左足以外にはとりあえず大きなケガは無さそうだった。だが、その左足は膝から先を少し動かすだけで激痛が走り、全身に衝撃となって伝わる。どう考えてもまともに歩けそうにはない。
    それでも立ち上がろうとして、木の幹にしがみついて両腕と右足で体を支えようとする。だがすぐに痛みで手足の力が抜け、そのまま崩れるように座り込んだ。
    連絡手段がなく、助けを呼ぶことが出来ない。手持ちのポケモン達も全て家に置いてきた。そしてこういう時に限って、誰の姿も見えなかった。待ち続ければ誰か一人くらいは通らないだろうかと思ってしばらくそのまま座っていたが、そこで別の問題に直面する。
    雪の上に座っているために、体が冷えてきた。近所の人が来るといっても、滞在することを想定していない林の中にはベンチなどの雪に触れずに休める場所は作られていない。一方でしっかりと人間が管理しているために、倒木などもなかった。下草や落ち葉は全て凍り付いた雪の下に埋まっている。
    どうにか移動しようと、両手で漕ぐようにしてみたり、横向きに転がってみたりするが、左足に負担のかからない方法などなかった。家に帰るには先ほどの斜面を登るか大きく迂回しなければならない。駅に向かう方がまだましだと考えて、痛みと途中から加わる疲労に喘ぎながら進んでいく。いっそ冷えれば痛覚が鈍くならないかと雪に押し付けたり寝転がったりしてみたが、寒くなるばかりで期待するほどの効果は上がらなかった。
    どれくらいそうやっていたのか、駅の近くまでようやくたどり着く。人のいるところに着いたら誰かに助けを求めようかと思っていたのだが、いざとなると知らない人にはなかなか声もかけにくい。
    どうにか立ち上がったものの、次にどうしようか決めかねていたが、ちょうど良いタイミングというか、駅から出て来た中に見知った顔を見つける。
    「ダツラさーん」
    手を振りながら右足だけで飛び跳ねる。それでも左足に衝撃は伝わるが、顔に出さないように気を付けた。会えれば助けてもらえると期待し、確信していたというのに、いざとなるとなんでもないように見せたくなる。
    ダツラがこちらへ歩いてくるのを、その場で待ち続けた。歩こうとしたらケガがばれてしまうのは確実だろう。この後一緒に家に向かう予定だったが、そこはどうにか誤魔化そうと考えていた。

    近付いてきたダツラに飛びつき、そのまま右側についてダツラの腕を掴んだ。雪の上を歩くのに慣れていないダツラを支えるふりをしながら、不審がられないように左足だけではなく右足も慎重に地面を擦るようにして歩く。
    だが支えるという割にはネジキがダツラに体重をかけて寄りかかっているため、ダツラはすぐにこれはおかしいと思った。少し進んだところで野生のビッパが何匹か前方を横切った。一度立ち止まって通り過ぎるのを待つ間に、ダツラが一切の予備動作無しにネジキの左足に触れる。身構える間もなく激痛に襲われ、ネジキが叫びとも呻きともつかない声を上げる。そのまま力が抜けて膝をつきそうになるのを、今度はダツラが慌てて支えた。
    「ケガしてるのか?」
    「……」
    ネジキは答えない。というより、答えられない。乱れた息を整えることに集中していた。
    ダツラは黙ってネジキを抱き上げる。驚いたネジキは降りようとするが、ダツラにしっかりと押さえ込まれているようでほとんど動きが取れなかった。ダツラの方が自分より力はあるだろうと分かってはいたが、軽く抱えられているだけにしか思えないのに。
    ダツラの表情がわずかに険しくなったように思える。ネジキは少し怯み、諦めたようにダツラに身をまかせた。足はどうやっても痛むが、少なくとも自分で立って歩くよりはずっとましだった。

    これまでの付き合いで、ネジキは我慢強い方だとは思っていた。それが軽く触れるだけで悲鳴を上げるとは、どれだけ痛かったのだろうと思う。それに、今無理をすれば治りも遅くなるだろうと、ダツラはネジキを家まで抱いていこうとした。
    後で思えば、この時互いに厚着をしていたのが問題だった。
    ネジキが抱かれる事に抵抗しようとしたのはわかった。だがその抵抗にもほとんど力が入っていない。標準に比べパワーもスタミナも足りていないとはいえ、それでもあまりに弱々しい。ダツラはそれを痛みのせいだと判断した。
    普段からあまり子供扱いされる事を好まないとはいえ、こんな時まで無理をしなくても、と思う。いったいいつケガをしたのか、ここまでにだいぶ消耗していたようですぐにおとなしくなる。そのままぐったりと身をあずけてきたネジキを、ダツラは慎重に、急いで家まで連れて行った。

    寝室へと運び込み、ベッドに寝かせてから足の状態を調べる。腫れている上になんだか人間の肌とは思えない色になっていたが、骨は折れていないようだった。
    少しだけ安心して手当てしようとしたが、ネジキが突然震えだす。声をかけてみたが返事はなかった。冬場、家の中は常に暖房がきいていて寒いという事はない。痛みのせいなのか、それとも熱でも出たかと額に触れると、驚くほどに冷たかった。
    歯も鳴るほど激しく震えるネジキをなんとか温めようと、風呂に湯を張り、ある程度溜まるまでの間は布団や上着をかける。声をかけ続けたが、意識が無いのか返事をする余裕が無いのか、相変わらずはっきりとした反応は無かった。
    そろそろいいかと考えて、毛布で体を包んでから抱き上げて風呂場へ向かう。どうにか服を脱がせてから浴槽に入れ、溺れないように片手で支えながら、もう片方の手で湯の外に出た部分にシャワーをかけ続けた。ダツラの服も濡れてしまうが、構わなかった。
    だいぶ落ち着いた、そう思ったころ、ネジキがゆっくりと目を開く。状況が飲み込めないのか、しばらくそのままぼんやりとしていた。
    ダツラを見上げる目の焦点が次第に合ってくる。体に触れる湯の感触が意識を揺り起こし、今自分が置かれた状況をはっきりと認識させた。
    だが、どうしてここに至ったのかは全くわからない。ネジキの記憶は駅から家へ向かう途中、ダツラに抱かれたところから先が存在しなかった。
    記憶を呼び出すのを諦めると同時に、覚醒からワンテンポ遅れて動揺と混乱に襲われる。慌てて立ち上がろうとして、痛みとまだ戻らない体力に崩れるように倒れて全身が湯に沈む。自力で立て直せず、パニックになりかけたネジキをダツラが急いで引き上げた。
    咳き込むような呼吸が落ち着くのを待って、ダツラはネジキの額に触れる。先ほどより温かく、震えも止まっていて、とりあえず体温の方は大丈夫だろうとほっとして、ネジキを引き上げる時に浴槽に落としたままだったシャワーを拾い上げる。……が、止めずに何も考えず持ったせいで、外に出た瞬間顔に盛大に湯を浴びてしまった。
    急いで栓を締めてから、水を飛ばすように首を振るダツラの姿に、ネジキが笑い出す。
    ここまで来たらもうこれ以上濡れても同じだろうと、ダツラは湯に両腕を入れてそのままネジキを抱き上げた。やり方などどうでも良かったのだが、笑われた仕返し、と言わんばかりに、わざとお姫様抱っこにしてやる。一糸纏わぬ姿でそんな状態になったネジキが焦って暴れそうになるが、やはり力が入っていない。構わずいったん下ろしてから、まだ足元の覚束ない体を支えながらタオルを取って全身を拭いてやる。
    「自分で拭けるよー……」
    ようやくというか、まともに口をきいたがその抗議の声にもいまいち力が無い。
    「無理するんじゃない」
    まだまともに立つ力も無いのにそう言われても聞き入れるわけにいかず、ダツラはそのままネジキの体を拭ききってから自分の方も拭こうとする。だが気付かなかった、というより気にしていられなかったのだが、服もだいぶ濡れてしまっていた。初めはお湯だったのだが少し時間がたって冷めてしまっている。ダツラ自身はなんだか冷たいくらいにしか思わなかったが、せっかく温まったネジキの体をまた冷やしてしまうかもしれない。急いで脱いでから寝室に連れて行こうともう一度ネジキを抱き上げた。
    「むー……」
    歩けなくては運んでもらうしかないとわかっているし、他意はないだろうとも思うが、こう毎度毎度お姫様抱っこというのはさすがに対応と反応に困る。
    互いに服は脱いでいても、ネジキの方はまた来る時に使っていた毛布に包まっているため、直接肌が触れているわけではなかった。それでも落ちつかず、見えなければいいのではと目を閉じる。
    脱衣所から寝室まで、ほんのわずかな時間だった。だがその間に、視覚を閉ざした事によって増した浮遊感と、毛布とダツラの体温に、なんだか気持ちよくなる。
    服を着せられてベッドに寝かされる。そのままダツラが部屋を出ていくと、なんとなくではあるがさみしくなった気がした。
    窓を見ると、そのほとんどが空の青で満たされている。時折風が積もった雪を吹き上げて、まるでダイヤモンドダストのような煌めきを作り出す。美しいのに、視覚からなんだか寒さを感じる気がして、無意識に布団を握りしめる。
    部屋も布団も温かくて、ネジキ自身も風呂で十分温まっていたと思う。それでも部屋の中で一人ぼっちという感覚と外の風景に、心が寒々しさを訴える。同じこの家の中にダツラがいる事はわかっているのに。
    不意に部屋の扉が開いてダツラが戻ってくる。危うく泣き出すところだったネジキは、何度か瞬きして誤魔化した。背にダツラの手が差し込まれて上体を起こされる。そのくらいなら自分で出来るのになー、と思ったが、それよりもダツラに身をまかせたい方が勝る。
    ホットココアのカップを渡される。飲み終わった後もネジキはダツラにカップを返さず、ずっと持っていた。渡したらきっとすぐ片付けに行ってしまうだろう。いる場所も、すぐに戻ってきてくれる事も分かっていながら、離れてほしくない。
    サイドテーブルにカップを置いて、片付けようと近付いてきたダツラの腰の辺りに倒れ込むような勢いで抱きつく。足が痛んだが、気にしなかった。
    抱きつかれた瞬間には驚いたダツラだったが、ゆっくりとベッドの縁に腰掛ける。引きはがすのは簡単だがなんだか惜しい気がした。
    しばらくたってから、腕をそっと外して元通りに寝かせる。疲れているのか、それとも本当に泣きそうなのか、いつもより潤んだ目をしたネジキがこちらを見ていた。
    ベッドの横に膝をついて、片手でネジキの手を握る。握り返して安心したように目を閉じたネジキを、ずっと撫で続けた。

    目を開けると、辺りは薄暗かった。カーテンの開いたままの窓から見える外の景色は完全に夜で、部屋には自動点灯の豆電球だけが点いていた。
    夜明け前に目が覚めた時のような感覚があったが、それならなぜカーテンが開いているのだろうと思う。
    記憶と感覚が次第に鮮明になり、ダツラと手を繋いだままである事に気付く。当のダツラは、ベッドの縁に上体を乗せたまま眠っていた。
    サイドテーブルには、ココアを飲んだあとのカップがそのまま置かれている。本当にあれからずっと自分のそばにいてくれたのかとなんだか嬉しくなった。
    ダツラを起こさないようにそっとベッドから下りて、今まで自分が使っていた毛布を一枚そっとかける。足の様子をみると、壁などにつかまればどうにか歩けそうだった。
    一体どれくらい眠っていたのかと時計を見た。夕食にちょうど良い時間だった事に笑いながら、そういえばお腹空いたなと台所に移動する。
    温かいものを食べようと今日の夕飯はシチューにしていた。今朝の時点で既にほぼ完成していて、あとは温めるだけで良かったのは運がいい。
    ダツラと自分のポケモン達をボールから出して食事させ、カップを洗う間にいい感じに温まってきた。あとはダツラを起こそうか起きるのを待つか、どっちがいいだろうなーと考えていた。

    飛び起きるようにして顔を上げる。部屋の中は薄暗い。たしかネジキが起きるまでついていようと思っていたはずだったが、いつの間にかダツラ自身も眠っていたらしい。
    目の前のベッドは空になっていた。サイドテーブルのカップもなくなっている。
    立ち上がろうとして肩に毛布がかかっている事に気付く。
    ネジキが先に起きたのか、歩けたのだろうかと思いながら部屋を出た。台所に入っていくと、ちょうど夕食の準備中だったらしいネジキが振り返る。
    具合を問う前に、右足でぴょんぴょん跳ねながらやってくる。飛びつくようにして抱きつかれ、胸の辺りに額を擦り付けられ、こちらを見上げてふにゃりとした笑顔になった。
    ネジキの方からこんな風にする事などそうそう無く、ダツラは驚いて一瞬固まる。抱き返そうとした瞬間には、ネジキは既に離れて鍋の方へと跳ねていった後だった。
    「今よそるねー」
    今の一連の流れなど無かったように、完全にいつも通りの態度に戻っている。
    さすがに皿を持ったままでは跳ぶわけにいかないだろうと、ダツラがテーブルまで運んだ。ついでにネジキの事も持ち上げて運んでやる。やはりというか抵抗しようとしていたが、ケガをしたネジキなどダツラにとっては何も問題にはならなかった。
    「さっきまであんなに素直だったのに」
    言いながらネジキの椅子を引いて、もう一度抱き上げて座らせる。
    「むー……」
    少し不機嫌そうな声と顔だったが、口元が緩んでいる。それを見て笑い出したダツラに、怒ろうか笑おうか判断がつかず、顔を見られないようにと苦し紛れにもう一度ダツラの体に額を押し付けた。
    かわいいと思ったが口には出さず、黙って頭から背にかけてそっと撫でる。
    「冷めないうちに、食おうな」
    美味しいというダツラにとーぜん、と言わんばかりに、笑顔というよりドヤ顔を向けてくるいつも通りのネジキに、さっきのは本当に何だったんだろうと思う。
    『ま、いいか』
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