鞠の転がる先は楓が紅葉し、地面を紅く染める頃。
稲妻の中で大きな騒ぎを起こし風のように去って行った異邦の旅人がこの地を去ってから数ヶ月経とうとしていた。
旅人がいた時はあれほど金髪の異邦人はどこかと探していた下町の人々も今では全く話題にも出さず自分達の商いで一杯になっている様子を見ながら小豆色の髪の少年はため息をついた。
「全く、流行りものに飛びつくみたいにすぐ囃し立てたかと思えば忘れるなんてね」
周囲の人々に聞こえるか聞こえないかの声で呟き城下町の店の間を通り過ぎていく。
少年の様子に気づいた一部の人が店の中から覗いていくるがそんなのは気にも留めず真っ直ぐ少年が向かうのは隠れたところに建てられている茶屋。
少年の姿を見るなり店番をしていた店員が警戒した様子で少年を見る。
2613