五日前。「雪原先生への誕生日プレゼントか」
「そーいやもうすぐ誕生日だもんなー」
風晴と空田が各々頷く。
十二月二十一日。
雪原の誕生日まであと五日に差し迫ってなお、メイはまだ悩んでいた。
「はい。所長にも聞いたのですが……」
あまり参考にならなかった、というのは心の中に留めておく。
「ちなみに所長はなんて?」
空田が興味津々でメイに訊いた。
「これです」
隠すことでもないので持っていたメモを二人に見せる。
一行目は揃ってスルーしたが、二行目で反応が分かれた。
「……七篠、これ本当にやるつもりか?」
「いいじゃんいいじゃん! 絶対喜ぶって!」
風晴は渋い顔をしているが、空田は結城の意見に全面賛成のようだ。
現状二対一で賛成票のほうが多い。
「いいんですかね……?」
やっぱりやってみる価値はあるのかも、とメイが真剣に悩み始めたところで風晴がバッサリと斬った。
「空田さん適当なこと言わないでください」
適当だったのか。
軽くショックを受けるメイに、空田が首を横に振って否定した。
「テキトーじゃないって。やっぱ誕生日といえばサプライズだからさ、これ結構いいと思うんだよなー」
「サプライズ……」
なるほど、と反芻する。
所長の案はどうやらサプライズ的な意味合いを兼ねていたらしい。はたして雪原が喜ぶのかはわからないが、サプライズの一環だと思えば悪くない気がしてきた。
「そそ。ついでにバルーンとかも用意しとけば? めちゃくちゃ誕生日っぽくね?」
「誕生日ですから」
風晴から冷静なツッコミが飛ぶ。
「風晴さんはどう思いますか」
メイに訊かれて風晴は少し難しい顔をした。
「……まあ、バルーンに関してはいいんじゃないか」
「なるほど。ありがとうございます」
真面目な風晴が言うのだからこれは間違いないだろう。
神妙に頷いて、メイは手元のメモにペンを走らせた。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)
→サプライズ感があって良い
・バルーン