お前らどうしてそうなんだひと目見て、あ、こいつ憶えている俺のこと、そう思ったんだ。まずいと思った。怖かった。
謝らないといけないと思った。だが謝ればきっとあいつは今の俺なら許してしまうだろうとも思った。
俺は許しなんて望んではいない。あいつは俺を赦してはいけないんだ。
だけど忘れてほしい。俺のことも何もかもあの頃のことは忘れて穏やかに幸せに生きてほしくて、
忘れてくれって、殴れば忘れると思ったんだ。だから殴ったら、動かなくなってしまった。
どうしよう。
どうしようあいつは俺を憶えているまま死んでしまったぞ!どうしよう!?忘れる前に死んでしまった!!また俺を憶えたまま生まれてくる!どうしよう、どうしたら、どうしたらいい、どうしようもない、しんだ、死んだんだ、すまない、すまない本当に、ごめん、ごめんなさい、俺はまた、いつもいつも、どうしてこうなんだ。
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ひと目見て、同性だというのはわかった。見たことのない、とても美しいひと。性別や年齢やどこの誰か何をしているのかだとか、すべてがどうでもよくなった。
自分を映す瞳があまりに澄んでいて、その時にはもう、好きだと。
好きだ。
好きだな。
なんてきれいで、
なんて欲しくなるのだろう。
合う目がまばたきもせずこちらを向いているのが愛おしい。
ああ、まばたきをしないから、涙で潤んできて、瞳が揺らぐ。その涙が邪魔だ。啜りとってしまいたい。
なんだ、俺を殴ろうとしているのか。いいだろう。一度受けてみて、味わってみたい。味わったら取ってしまおう、邪魔だから。手際はいいほうだったと思うから何も心配は、
手際。
手際とはなんのことだ?
俺はいま何を考えて、いや、どこに思考を飛ばしていたのだろう。まずい、まずいという言葉が甘いほどにまずい。
これは危険だ。俺は危険だ!!
こんなものはいてはいけない、この世にあってはならない、君の前に現れるべきではない、ずっとそうだっただろう?
あ。そうだ。そうずっとだ。続かない続くべきでない忌まわしいずっとがもうずっと続いているのだ。
なぜ忘れていたのだろう。また君に俺を殺めさせてしまう。俺はその後のことは知る由がないというのに、責任も取れないのに、また君に殺めさせてしまう。
いつもすまない、泣かないでくれどうか、泣かないで、すまない、ごめん、俺は君のことになると、どうしてこうもどうしようもないのだろう。