気の利かない男「え、じゃあ今日の弓場ちゃんもしかして全身神田くんコーデやったりする?」
立ち昇る薄煙の向こうから、相変わらずの無表情で生駒が弓場の腕時計を指差す。目の前の友人は基本的にコンクリートで固めたように表情筋が動かないが、その代わり身振りや声の調子で如実に、誰よりも分かりやすく感情を伝えてくる。その不器用だか器用だか分からない友人は声にありありと愕きを乗せながらカルビを裏返した。生駒の隣に座っていた柿崎も生駒の声に釣られ弓場を頭の天辺から辿るように眺めると、「あー、確かに」と感心したように頷く。
「そういやそのシャツ神田くんと買い物行った時買ったって言ってたよな」
「靴は確か去年の誕生日プレゼントに神田くんから貰ったんだよな」
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