或る僧侶の独白――僕が僧侶になった理由? そんな珍しいものでもないよぉ。
僕の生家は奥羽の方の商家でさ。昔はそれなりに裕福だったみたいなんだけど、ほら、あれがあったじゃない? 天保のさ。そう、飢饉。
あれですっかり蓄えが尽きちゃったみたいで。一番幼かった僕が、お寺に入れられることになったんだよねぇ。
あ、そんな辛い話じゃないから。そりゃ、家族と離れるのは寂しかったけど……慣れちゃえば、そんなに悪いものでもなかったんだよね。
僕って、ちっちゃい頃、泣き虫で力もなくてさ、近所の歳の近い子たちによくいじめられてたんだ。女みたいだって。だから、そのいじめっ子たちから離れられるんだと思えば、むしろ嬉しかったくらいで。
お寺はさ、そりゃまぁ楽なことばかりじゃなかったけど……毎日の早起きとか掃除とかさ。北の方だったから冬の朝とかすっごく辛かった!
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