舎利容器の中身◆はじまり
「そろそろ裟羅を眷属に迎えようと思います」
将軍を一心浄土に呼び出し、影はそう告げた。
「九条裟羅を眷属に、ですか」
「ええ。今ならちょうどよいでしょう」
ちょうどよい。その意味を将軍は考えた。
影が、かつて目指した静止した永遠の道を捨て、変化を受け入れ前に進むと決めてから百年が経った。
百年という時間は、稲妻の社会を大きく変えた。
技術の進歩は武家を形骸化した。現在ごく一部の武家以外はぼぼすべて衰退し、必然的に奉行家制度も機能しなくなった。
三奉行の中身はまるで変わった。幕府の下部組織として直接管理され、平民出身の官僚も上層部に増えてきた。稲妻社会において、家という後ろ盾は昔ほどには重要ではなくなった。
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