ハニーおいっ、待て、それ違うだろ、ローションじゃねえ、なんだ、それっ!?
蜂蜜。
は?
蜂蜜だけどっ。
シルエットで杉元が手にしているボトルがいつもと違う形状だと気付いて手首を掴んで問うも、何故か堂々と白状されて、そこから攻防戦が始まった。こいつ、俺の身体にこれをかける気だ、と解った以上、俺はそんなもので身体をべたべたにされたくないし、杉元は杉元で引く気配もない。何がなんでも使う気だ。暗がりでも目で解る。本気の目だ。
やめろ、そんなもん。
いいだろ。
ぐぐぐぐと力を込められて、両手でボトルを手にしている右手を掴んで押し返そうとするが、こっちは寝そべっていて杉元は馬乗りで上から押し付けようとしてきているのだから分が悪い。そもそもの腕力でも勝てそうにない。
なんで、そんなもの使おうとするんだよ、くそ、やめろって。
いいだろ、ちょっとくらいっ。
少しも説明に、なってねえっ。
ボトルを開けようとする素振りを見て、親指を上から手で押さえる。こんなもん、下手にベッドの上にぶちまけられても困る。先ずは話をして気をそらせるか。
それを誰に塗るんだ。
俺とお前。
意外な返答とともに杉元の力が少し弱くなったのを感じた。やっぱりそうだ。こいつは何か云いたいことがあると、云わずに先に行動に出たりする。
どこに塗る気だった。
どこでもいいから塗って、そしたら。
更に力が弱くなり、その隙をついてなんとか起き上がる。股の上で膝立ちしていた杉元の胸を身体で押して下がらせ、向き合うようにベッドに座った。ボトルも両手で柔く持っているだけになって、ベッドサイドの照明を点ける。目を細め、明るさに慣れた頃に、そっと杉元から蜂蜜を取り上げて、大人しくなった目を見据えた。
ムードを作りにか。だからって勝手に使うな。
だって、嫌がるだろ、お前。
杉元が俯く。
嫌がると解っていることをして、なぜ、好いムードが作れると思ったんだか。
理解が出来ない、と頭頂を撫でて蜂蜜のボトルを見つめる。杉元はまだ俯いたままだ。
お前、時々本当にどうしようもねえな。
話ながら静かに蓋を開け、少しだけ指にとって唇につける。焼きが回った。
本当にどうしようもねえ。
もう一度同じ台詞を口にして近付いて杉元の胸に手を添える。顔を上げたのに合わせて、下から掬い上げるキスをしてやる。自分の唇が杉元の唇の裏側に触れるよう押し付け、味あわせると解ったのか舐めてくる。
ものに頼んな、阿保が。
そう一言伝えて、押し倒した。