……僕の隣の席には、魔法使いがいる。
そう言うと、語弊があるかもしれないし、妄想乙!と笑われるかもしれないけど。
それくらい彼はクレバーでミステリアスで。
ふわふわと、不思議な雰囲気のひとだった。
社交的で話し上手で人気者で。
授業中は、いつも手元でなにか他のことをしていて、授業はどこ吹く風。欠席も割と多かったが、それでも成績はいつも上位で。
先生からの評価も上々。
誰とでも上手く付き合うけれど、誰にも踏み込ませない。
誰も、彼のトクベツにはなれない。
皆そう言っていたし、僕もそう思っていた。
ある日。
ふと隣を見ると、彼は教科書を立てて。
手元でトランプを弄んでいた。
ある意味、いつもの光景。
違ったのは、整った横顔をチラチラ見ていたこちらの視線に、彼が気付いたこと。
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