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    makotomilktea

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    makotomilktea

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    🧡💜(🦊👟)の学パロ1
    恋愛というより親愛に近い
    今後❤️‍🩹💚にもなる予定

    #Myshu
    #myshu
    #Shussy
    #MystariASS

    俺にとって、シュウは友達よりも距離の近い、家族みたいな存在だった。

    母親に連れられ、まあまあ大きい街から地方へ引っ越した。だだっ広い田んぼと畑の間に、ぽつんぽつんと木造住宅が建っている。その後ろには木が生い茂るでっかい山々。絵に描いたようなド田舎。
    俺はまだ9歳のガキだった。慣れ親しんだ前の家を離れる寂しさとか、新しい学校でやっていけんのかなとか、とにかくいろんな感情がごっちゃになって、車に揺られる度ぐらぐら考えていたのを覚えている。

    「はい、じゃあ自己紹介をどうぞ」
    「ミ、ミスタリアスです…よろしくお願いします…」

    黒板の前で挨拶をした時、自分に向けられるたくさんの目に耐えられなくて下を向いた。たくさんっつっても、そのクラスには10人しか生徒がいないんだが。今じゃ1クラス40人いる高校に通う身からすれば、なにそのくらいでびびってんだよって話だけど。

    「ミスタ君の席はそこね」
    「はい…」

    ランドセルの肩ベルトを握りしめ、ちくちくと頬を刺す視線に耐える。窓際の机までの距離が何キロも先のように感じた。
    ようやっと椅子に座り、教科書を開いてそこに書かれた文字を追うふりをする。本当は内容なんてちっとも頭に入ってこなかった。

    「ねえ、」

    鈴の音みたいな涼しい声だった。振り返ると、後ろの席に座った黒髪の少年が「それ、」とランドセルにぶら下げたキーホルダーを指さす。当時ハマっていたアニメのマスコットだ。どうしても欲しくて、親にねだって買ってもらったやつ。

    「そのアニメ、好きなの?」

    喉に言葉がひっかかって声にならなかったから、代わりにこくんと頷く。すると彼は目を細め、

    「僕もなんだ」

    と人懐っこく笑った。
    外では蝉が鳴いていた。それがシュウとの出会いだ。



    シュウはクラスの中で、というより学校の中で人気者だった。
    頭が良くて、運動もできて、しかも性格もいい。同級生からも教師からも信頼があつい。マジですごいやつ。
    そんなシュウはなぜか俺のことを気に入って、話しかけてくるようになった。俺は共通の話題で盛り上がれるのが嬉しくて、だんだんと俺の方からもシュウに話をふるようになった。
    でも、シュウは普通のいいやつ、ってだけじゃなかった。



    「ミスタ君、一人で大丈夫?先生がおうちまで送ろうか?」

    その日は授業参観だった。俺の親は仕事が忙しいから来てないけど。でも、それはしょうがない。前の学校でもそうだったし、もう慣れている。
    授業が終わった後。親と手を繋ぎ下校する生徒の列を席からぼんやり見ていると、担任の先生が眉を下げてそう提案してきた。クラスで親が来なかったのは俺だけだった。俺が寂しそうに見えたんだろうか。別に、いつものことなのに。
    俺はノートと教科書をしまいランドセルを背負う。

    「平気です。先生、さようなら」
    「そっか…さようなら。また明日ね」

    ぺこんと頭を下げ、廊下を出る。そこにはまだ何人かの保護者と生徒が残っていた。その間を縫うように進む。

    「…しょうがないわよ、闇ノさんのお宅なんだから……」
    「まあ、なにがあるかわからないし……」

    聞き覚えのある名前に足を止める。誰かの母親らしき人物が二人、通路の端で話し込んでいた。そのうちの一人が俺に気づく。

    「君、最近引っ越してきたリアスさんちの子?」
    「あ、はい」
    「君のクラスに闇ノシュウ君いるでしょう?逆らわないほうがいいわよー」
    「え、それってどういう…」

    さからう、って…シュウになんかあるワケ?俺はちょっと怖くなって半歩下がった。

    「あそこのお宅はね、呪術師の…まじないを使う家なのよ。そのおかげでこの町を守ってもらっているけど、もし怒らせたら…なにが起きるかわかったもんじゃないわ」
    「ちょっと、小学生にする話じゃないわよ」
    「もし機嫌を損ねて、私達までとばっちりが来たらどうするの?それに、ここに住むならいつか知ることじゃない」
    「それはそうだけど…」

    まじない?まじないって漫画やアニメに出てくるみたいなやつ?おふだで封印したり、黒い炎で攻撃したり、みたいな…。
    でも、シュウはそんなのを使う恐ろしい人間に見えない。この人たちが勝手に噂してるだけなんじゃないのか?
    俺はまだ話し合いを続ける二人からそっと離れた。心臓がまだばくばくいっている。
    まじない、なんて本当にあるわけないよな?家までの田んぼに挟まれた道を走る。怖くて背後を見られなかった。



    「あ、ミスタ君、おはよう」

    次の日。教室のドアを開けると同時、朗らかにあいさつしてくるシュウに、一瞬ためらって「…おはよ」と答えた。シュウが不思議そうな顔でこっちを見たけど、俺はすぐに椅子に座ってしまった。
    …昨日のこと、ホントなのかな。クラスメイトと話すシュウの横顔を盗み見る。アニメで見たような、恐ろしい術を使うキャラクターと全然違う。
    でも、今すぐシュウに聞く勇気が俺にはない。
    俺はノートの端を破り、そこに小さく「じゅぎょうがおわったらはなしたい」と書いてシュウの机の中に置いた。気づいてくれるだろうか。

    「はーい、みんなおはよう。出席をとるよー」

    担任が入ってきて、生徒全員が自分の席に戻る。シュウが椅子を引く音に、胸がじんじんするような緊張を感じた。今、シュウは俺の書いた紙を読んでいるだろうか。

    とんとん、

    「!」

    先生が板書に集中していたその時、誰かが俺の背をつついた。それにびっくりして肩が跳ねる。シュウだ。
    彼は俺に折りたたまれた紙を差し出した。それを後ろ手で受け取る。
    見つからないよう膝の上で紙を広げた。

    ”いいよ”

    その横にゆるい感じの笑顔のイラストが描かれていて、俺は笑ってしまった。
    ほら、シュウはいいやつじゃん。内心ちょっとでも悪いやつかも、と思ったことに後ろめたさを感じてしまうほどに。



    西日が差し込む教室。他の生徒が帰るのを、俺は机にもたれて下を向き、シュウは座ったまま頬杖をつき外を眺めて待った。視線は交わらなかった。

    「それで、」

    最後の一人が出たのを見計らって、シュウがこちらに向き直った。

    「なにかな、話って」
    「……」

    どうしよう。勢いで話があるなんて言ったけど、なんて切り出したらいいのか。俺は口を開いたり閉じたり、「あー、えっと…」と寒さでかさついた唇をもごもごさせた。
    シュウがゆっくり瞬きして俺の言葉を待つ。

    「…シュウの、家ってさ…その…」

    俺の小さな声に、シュウは一瞬目を開き、「ああ、なるほど」と呟いた。

    「聞いたんだね。僕の家のこと」
    「、うん」
    「本当だよ」

    シュウの答えに左手が震えた。

    「闇ノ家は呪術師の家系なんだ。だから、僕も呪いを使える」
    「……」
    「といっても、悪いことに使ったりしないけど。…でもやろうと思えば、誰かを傷つけることもできるよ」

    シュウが俺の名前を呼ぶ。

    「怖い?僕のこと」

    紫の瞳は引き込まれそうなほど透明で、嘘をついても簡単に見抜かれてしまうだろう。
    それでいて、シュウの表情は悲しそうだった。教室のカーテンが風に吹かれたら、一緒にシュウも連れていかれるんじゃないか。それはいやだな、と思う。俺、シュウともっと仲良くなりたいから。

    「呪いとか、そういうのは怖い、と思う」

    喉から出た声はかすれていた。シュウは俺から目を逸らさない。

    「けど、シュウのことは怖くない」
    「…どうして?僕は人を呪うこともできるのに」

    どうして、ってそんなの、

    「だって、お前頭いいし優しいじゃん。もっといい方法を思いつくだろ、きっと」
    「……」

    それはシュウにとって、予想外の返答だったらしい。彼はぱちくりと目を瞬かせて、黙りこくってしまった。
    …嫌だったかな。思ったことをそのまま言ったんだけど。

    「…すごいね、ミスタは」
    「…は?」

    なんで俺がすごいって話になんの?シュウ、俺の話ちゃんと聞いてた?
    今度は俺がびっくりする番だった。

    「それはシュウの方だろ」

    シュウは首を横に振った。

    「なんていうのかな…僕にないものを、ミスタはちゃんと持ってるんだよ」
    「えぇ、マジで言ってる?」
    「本気だってば」

    寒くないようセーターの袖をギリギリまで引っ張って、軽口を叩きながら二人で教室を出た。

    「俺、引っ越してきて友達できるか不安だったんだ。シュウがいてくれてよかった」
    「…そっか」

    真正面から言うには恥ずかしいので、下駄箱で靴を履き替える間にぼそっと告げた。
    シュウは俺に背を向けて靴ひもを結んでいたから、表情はわからなかったけど、多分笑っていたんじゃないだろうか。



    それから、俺たちの距離は確実に縮まった。朝言葉を交わすだけじゃなくて、放課後にも遊ぶようになった。シュウが教えてくれた小さな花の蜜を吸ったり、ゲーム機を持ち寄って対戦したり。特に何も話さずに、二人で神社の境内の石に座って過ごしたり。
    そんなささいなことを鮮明に覚えているのは、シュウと過ごした時間が今でも好きだからだろう。
    シュウはあの頃、仕事で家を空けがちな親よりも、ずっと近くにいた存在だった。なんでも話せて、頼れて、ふざけあえる兄弟みたいな。



    三年後。

    「ミスタ、待ってよー!」
    「早く来いよ、シュウ!」

    自分よりも背の高い向日葵の大群の中を走る。振り向くと、シュウは俺を見失わないように細い足を必死に動かしていた。

    「はあ、はあ、はあ…」

    開けた場所に出て息を整える。プールの授業ですっきりしたのにまた汗をかいたな、と笑った。
    ランドセルとスイミングバッグを地面に置いて、木製の柵の上に腰掛ける。
    俺とシュウのお気に入りの場所の一つだ。ここでだらだらと話をするのが夏の決まり事みたいになっていた。
    俺は山の向こうで大きくなっていく入道雲をぼおっと見ていた。

    「…あのねミスタ、」

    隣で足をぶらぶらさせていたシュウが口を開く。

    「僕、中学は私立のところへ行くつもりなんだ」
    「……!」

    私立。俺はその時まで、中学もシュウと地元の公立へ通うのだと信じて疑っていなかった。というより、私立の中学に入ることなんて思いつきもしなかった。
    それで、と言いにくそうにシュウが続ける。

    「もう小6だから、受験勉強しなくちゃいけなくて。もうこんな風に遊べないかも。ごめんね」
    「そっか…」

    足元の自分の影は、オレンジ色と紫色が混ざってどこか寂しそうだ。それを打ち消すように、俺はわざと明るい声を出した。

    「でも、受験が終わるまでの話だろ?中学生になってもさ、一緒に遊ぼうぜ!」

    シュウは顔を上げ、目を細めて笑った。

    「うん、ありがとう」
    「絶対だぞ!会ってくれなきゃシュウの家まで行くからな!」
    「んはは、わかったわかった。絶対だよ」

    だんだんと暗くなっていく夕闇の中で、俺たちは別れる時間を惜しむように、何時間も話し込んだ。


    「おかえり、ミスタ」

    アパートに帰ると、珍しく母親がリビングにいた。いつもは俺が眠くなる時間に仕事から帰るのに。

    「母さん、今日は早かったんだ」

    洗面所で手を洗い、ダイニングチェアに体を預ける母の元へ戻る。

    「ミスタ、大事な話があるの。座って」

    重い口ぶりに、俺は嫌な予感がした。
    向かい合った母の顔は、疲れでしわが刻まれていた。彼女は「言いにくいことなんだけど、」と切り出した。

    「ここを出ていくことになる。…今すぐにじゃなくて、来年の春に。すごく遠いところに移るわ」

    息が止まった。

    「中学からはそっちの公立に通ってもらうから、もう今の友達とは……ごめんなさい」

    母は額を手で覆い、大きく息を吐いた。元々こっちに来たのは、母の親戚を頼ってのことだった。つまり、これ以上その親戚を頼れなくなったってことだろう。

    「…大丈夫だって。ほら、一番仲いいやつも、中学は別のとこ行くんだって。だから別に、引っ越して困ることそんなないし、俺のことはいいから!」

    俺は引っ越しをするというショックよりも、親の辛そうな顔をこれ以上見ていたくなくて、早口でまくしたてた。

    「ミスタ、」
    「シャワー浴びてくる!」

    なにか言いたげな親の声を遮って立ち上がり、洗面所のカギをかけた。服をおざなりに脱ぎ捨て、シャワーの水栓をひねる。

    「う、」

    水の勢いが強すぎて、まともに顔に食らった。髪が濡れていくほど頭の奥が冷えていく。
    小学校を卒業したら、もうシュウには会えないかもしれない。一緒に遊ぶこともない。ちゃんと約束したのに。
    ぐず、と鼻を鳴らした。
    シュウ、俺どうしたらいいんだろう。
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