年賀用SS りぱに飼われてるれっさべだー 新年初の朝、リッパーはベッドに馴染みのある温もりがない事に気がつく。
もしや、とリビングへ行けば……居た。
鏡餅の上に橙色のふさふさとした獣が一匹。レッサーパンダのレッサベダーだ。落ち着く、といってちょこんと乗っている。
ベッドよりも、季節に合わせた鏡餅形のクッションの方がお気に召したらしい。
「ひどいですね、冬の朝は冷えるというのにベッドに私を一人きりにするなんて」
冗談交じりに声をかけ、一撫でする。レッサベダーは、心地良さそうに目を細めながら返事をした。
「……ん、おはよう。いや、あけましておめでとう、か? 少し小腹が空いてベッドを出たから、身体が冷えてな」
暖炉の火が消えたキッチンは寒かった、とレッサベダーは自分のしっぽをマフラーのように巻いている。
「おはようございます、そして……あけましておめでとうございます。それなら尚更、戻ってくれば良いものを……」
「いや、寝てる中急にひんやりしたものが入ってきたら目が覚めるだろ」
気にしなくていいことを、こうして変に気遣う。戸棚にしまっておいたクッキーは、つまみ食いするのに。
口周りにはクッキーの食べかすがついている。
「新年に見る夢は特別だって聞くし、俺のせいで忘れたら残念だろ……ところで、いい初夢は見れたか?」
首を振れば、何故か自分の事のようにレッサベダーはしょんぼりとした。
甘やかして可愛がりたくなり、残っているクッキーを口元へ持っていく。すると、素直にサクサクと食べた。
「あなたと居られる時間よりも、いい夢はないですよ。冬毛でいつもよりふわふわしたあなたを抱きしめて迎える朝を、楽しみにしているんですから」
それが至福のひとときで、必要なのだと伝える。
イマイチ理解していなさそうな顔で、そうか、と頷く。この小さな獣がわかるまで、めいいっぱいに愛でてしまいたくなる。
もしくは、ベッドから出られなくしてしまおうか。
「……ん、これ、今年のえと? だよな。タツっていうドラゴン!」
そんな邪な思いを向けられている事は露ほども知らずに、動物ゆえかレッサベダーは無邪気に笑う。
冬季限定のクッキーは、毎年違う生き物が象られている。
「強そうでとてもかっこいい」