Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    hiehiereitoko

    @hiehie_hiehie

    自由に書きます。人を選ぶやつばっか。多分。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 81

    hiehiereitoko

    ☆quiet follow

    メンヘラ要/ジュン要
    リスカの手当てをする話。

    #ジュン要
    junShaku
    #リスカ
    wristCutting
    #病み
    illness
    ##精神不良
    ##ジュン要

    許されるようなそんな気がしてびりびりと痺れた腕が真っ赤になって、変色していく。
    頭がぼやけて、雲の上に乗っている心地がする。
    そんな時、ドアの開閉音が鳴った。ガチャっと静かでも、かといってうるさくもない音が響く。
    誰、かなんて考えることもない。この家の住人はぼくとさざなみだけなのだから。
    「HiMERU」
    「……なんですか」
    呼ばれた。
    さざなみがぼくの名前を呼ぶ。
    だからひと呼吸置いて、なんでもない顔をして口を開く。
    「…………」
    なのに、さざなみは黙ってしまった。何かを言いたげにしたかと思えば、特に声になることなく飲み込まれていく。
    呼んだくせに何も喋らない。
    「さざなみ」
    「なんだよ」
    「言いたいことがあるならはっきり言うといいのです」
    「まぁ……それはそうだけど」
    さざなみは気まずそうに顔を背けた。ぼくから視線を外して、目線を下に落とした。
    この部屋にいるのはぼくとさざなみだけ。
    もっと言えば血塗れになったぼくと、お風呂上がりにほかほかしているさざなみ。
    タオルを首に巻いて、若干水分を纏っているさざなみ。
    「はやくないですか」
    「んなことねぇよ。なんならいつもよりちょっと遅いくらいだ」
    「何してたのですか」
    「あー……まぁ……処理とか……あの……ムダ毛の……ですかねぇ?」
    「なんで疑問系なんですか」
    「あんま言うことじゃねぇだろ」
    「別にぼくはアイドルはトイレに行かないなどとは思ってもいないのです。必要ならばするといいのです」
    よく見ればさざなみの腕はいつにも増して、ツルツルのキレイな腕になっている。
    じっと見ないとわからないくらいだけど、スキンケアをしていたのだろう。
    丁寧にクリームを塗って、流れに沿って剃刀やらシェーバーで整えていくのだろう。
    さざなみの腕がキレイになっていく間に、ぼくの腕がぼろぼろになっていく。あまりにも皮肉が効いている。
    正しい剃刀の使い方だ。
    本来ならそんな使い方をされていたであろう剃刀は赤黒い血が付着して固まっていた。
    「HiMERU」
    「だからなんですか」
    「手当て、するから。立てるか」
    「それくらいできます。馬鹿にしないでください」
    ぼくはベッドに腰掛けていた手をついて、立ちあがろうと力を入れた。
    ぐにゃり。
    途端に頭が一瞬ホワイトアウトする。まっしろになって気を失いそうになる。
    くらりくらりと脳内が揺らされてふらつく。
    えっと、なんでしたっけ。めいそう?はんしゃ?なんかそんな感じの名前の部分が狂っていく。
    「手、貸せ」
    「し、仕方がないのです」
    ぼくは平衡感覚の若干狂った身体をさざなみに預けるようにして立ち上がる。
    「あ……」
    たらりとまだ固まってなかった部分から血液が流れ、腕を伝う。
    たらたら、たらたらと肘の裏側から鮮やかな赤が重力に従って落ちていく。
    「あとでやりゃいいから。気にすんな」
    ぼくがちょっと迷うように立ち止まると、さざなみはそう言って背中を押した。
    真っ白いシーツに赤いシミが落ちると、キレイにするのが大変だから。
    なんて、優先順位がおかしいのだけど。多分、気にするのはそっちじゃないのだけど。





    「腕、出せ」
    HiMERUを脱衣所に連れていくと、水を流した。
    まず、血を洗い流して、消毒。そしてガーゼなり絆創膏なりで塞いで、範囲が大きければ包帯を巻く。
    ジャージャーと流れる生暖かい水におそるおそると言っていいほど、怯えながらHiMERUは水道に腕を差し出した。
    「……っ……」
    わかんねぇけど痛いのかもしれない。水で流すより、刃物を肉体に入れる方がよっぽど痛いと思うのだけど。
    透明な水が、艶々とした赤を滲ませてなんとも言えない液体が洗面所に流れ落ちていく。
    あまり流れさせといても無駄に血が減っていくのでそこそこにして、使ってないタオルをとって水を切る。
    真っ白い洗いたてのタオルが薄紅色にじわりと染まった。
    微妙に深く切ったな。
    多分ここ最近では1番深い。
    その緩急を感じ取れるまでにはこの行為に慣れてしまった。
    口に出すことはしなかったし、するつもりもなかった。
    今更傷の深さに言及したところで、どうにかなるとも思わない。
    足元のおぼつかないHiMERUを再びベッドに連れて行った。
    力が入っておらずちょっと時間がかかったが、無事にベッドに座らせた。
    「さ、さざなみ。もう終わりでいいのです。充分なのです」
    「……ダメですよぉ?」
    「さざなみの意地悪!もういいって言ってるのに!」
    「はいはい。文句言ってていいから大人しくしてな」
    「その言い方ムカつくのですけど!……〜〜!!」
    切れ込みの入った、傷だらけの腕に、消毒液を染み込ませたコットンで軽く叩く。
    染みるのか、HiMERUはこれを嫌がる。
    コットンを当てるたび、びくっと肩が揺れる。
    なんか居ましたよねぇこういう小学生。転んで手当てに騒いでた子。
    それにしてはでけぇけどな。あんたは。
    「はい。終わり」
    あとは絆創膏でも貼って包帯を巻く。それで完成。
    「さざなみ……」
    「まだダメ」
    「……わかったのです」
    「よし。いい子だ」
    HiMERUは腕を広げてオレに抱きつこうとしてきた。
    それが嬉しいとか嬉しくないとか、良いとか悪い以前にせっかく消毒したものが台無しになってしまうのでストップをかける。
    包帯を巻いている間、HiMERUはそわそわしていた。
    これだけ見ると、まぁ、かわいい。甘えたいんだろうなぁとわかるし、甘えさせてやりてぇ。
    くるくると腕の形に白い布を巻き付けていく。意外とコツが必要で、我ながらうまく巻けたとおもう。
    「おわり……っうおっ?!」
    「さざなみっ……さざなみっ……!」
    「あぁ、はいはい。さざなみですよ〜」
    HiMERUは思いっきり体重をかけてきた。そのせいでHiMERUに押し倒された形になる。
    そのポジション好きっすねあんた。
    下からHiMERUを見上げる形になった。HiMERUは上機嫌にオレの身体に馬乗りになっているけど、やっぱり顔色が若干青い。不健康な色。
    「さざなみ」
    「ん?んむっ……」
    返事をするまもなく上からキスが降ってきた。
    唇を合わせて、そして舌が侵入してきた。
    オレの舌裏に薄いような、それでいて熱い舌が絡まって淫靡な音に包まれる。
    じゅるっじゅるっといやらしい水音が口腔内から発する。
    ちらりと目を開けると、HiMERUの色付いた艶やかな頬と、真っ白い包帯が飛び込んできた。

    真っ当な解決法なんかここにはなかった。
    だけど、こうして慰め合う。その表現はあまりにも不健全で、爛れているだろう。
    「さざなみ、好きです」
    「オレも」
    それでも止めない。
    傷だらけの心が壊れる前に、もう一度キスを交わした。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🙏🙏😭🙏💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    hiehiereitoko

    DONEサンタクロースを知らない要と、そんなことも知らねぇのか……と思いつつ自分にも来たことがないから「いい子にしてるといいらしいっすよ」と曖昧で語気が弱まっていくさざなみのクリスマス話。
     はいはい。あんたはいい子だよ。オレが保証する。
     未来軸。さざなみ、要両方とも19。退院してふたりで過ごしている。Merry Xmas
    過去も想い出も一緒に食っちまおうぜ「さざなみ、この赤いひとよく見るのですけどクリスマスと何か関係あるんですか」

     これを言われたとき、オレは古典的にずっこけそうになった。

     季節はすっかり冬で、気温は一桁台が日常化していき、吐いた息がすっかり白くなった12月。
     リハビリがてら散歩というか。気取った、少しの期待を込めた言い方を許してもらえるのなら、デートしていたときのことだった。
     
     街中はいつのまにか赤や白、または緑に彩られ、あたりには軽快なクリスマスソングのイントロが流れている。夢みたいに平和そのものの世界だった。
     
     そんななか、デフォルメされたサンタクロースを指しながら要は不思議そうな顔をしていた。
     
    「嘘だろ……」
    「今すごく失礼なこと考えましたね。さざなみの考えることくらいぼくにはお見通しなのですよ」
    3464

    recommended works