ハッピーバレンタイン エアコンの動く音だけが響く部屋で、類は本を読みながら恋人の到着を待っていた。内容が一区切りついた所で時計を確認すると、約束の時間まで五分を切っている。
二人用のソファーに本を置いて、キッチンへ向かおうとした時。
インターホンが鳴る。
「はーい」
合鍵を渡しているのだから、勝手に入ってくればいいと類は伝えた事があったが首を横に振られた。理由を尋ねれば、迎えてくれるのを楽しみにしていると返されてしまい心当たりがある類は何も言えなくなったのだ。
「いらっしゃい、司くん」
「邪魔するぞ」
満面の笑みを浮かべる司の寒さ対策は、完璧と言っても過言ではない。しかし、今日は耳あてを忘れたのか赤くなっていた。
「どうぞ」
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