暴君の引っ越し業 「おい、選べ」
ばさりとテーブルの上に乱暴に置かれた本を手に取ると一つは住宅雑誌でもう一つは通販の雑貨雑誌だった。
「シアンさん、引っ越しされるんですか?」
「引っ越し……まあ、そうだな」
シアンさんの家がどこにあるのかは知らないけれど、流石に研究室に引きこもれる生活は良くないと理解されたのだろうか。そんなことを思いながらシアンさんがどういう意図で渡して来たのかよく分からないままページを捲る。
「それで、選べと言うのは…?」
「好みとかあるだろう。どういう間取りがいいだろか、こういう家具がほしいだとか」
…シアンさんはこういったことを決めることがはじめてだから私の好みを参考にしたい、と…そういうことなのだろうか。ううん、きっとそうなのだろう。
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