1人で勝手に作り上げた偶像は、跡形もなく兄に踏み潰された。
いつも優しくてカッコイイ世界一のFW。
そんな兄を慕っていた。だが今はどうだ?
優しい言葉なんてひとつも掛けてくれなくて、そして今にも壊れてしまいそうなくらいに泣いている。とてもカッコイイとは言えないだろう。
俺が想像していたより、兄はずっとずっと脆くて弱かったのかもしれない。
そう思うと、今まで兄に背負わせていたこの感情が途端に申し訳なく感じてしまった。また兄に迷惑をかけている。そんな罪悪感でいっぱいになり、泣き疲れて寝てしまった彼を横目に、財布を持って実家から逃げ出した。