歩む道「ふう」
目を通す書類にひと段落ついたところで一息つく。目の前にはまだまだ高く積まれた書類の山。常日頃から不在にすることも多く、定期で処理できるわけではないためどうしても溜まってしまいがちだ。
それでも長たる自分の確認が要らないものはできる限り回さずうまく処理をしてくれる官達には感謝の気持ちしかない。それでも長い時間机に齧り付いていたため、動かしていない体はガチガチだ。
少し休むか、と席を立ち伸びをする。窓の外に見える景色はすでに闇を帯び、空には月が輝いていた。優しい光を放つ満月はいつもと変わらぬ姿でそこにいた。あの日思い描いた未来には必ず君の姿があったはずなのに……。
ずっと隣にいるのだと疑ったことのなかった友。いつから歩む道が変わってしまったのか。駐屯地に潜入した日か、剣と盾の紋章を互いに宿した時か、もしくは共に飛び込んだ川ではぐれてしまったあの時か……。
考えても答えは出ない。今はっきりとわかることは自分達が敵対する組織に所属すること。そして互いの組織のリーダーであることだけだ。
この戦いにも終わりが見えてきた。最後に立っているのはどちらなのか。倒れているのが自分であればいい。そうどこかで願ってしまいもする。それが己の今の立場を否定するものだとわかっていてもだ。
しばらく月を見上げる。静かな闇の中、月はただそこで輝いていた。
「続きをするか」
鬱々とした気持ちを振り払うかのように頭を振って席に着く。まずは目の前のことに集中しよう。1つ1つ片付けていけば必ず終わりに辿り着く。どんな結果であれ。
遠くの友に思いを馳せながら、シェズとジョウイはそれぞれの部屋で再び書類の山との戦いを始めた。