そういえば:ナナミ「そういえば今日誕生日だったね!」
珍しくシュウさんが呼びにきたので何かと思えばわたし達の誕生日をすっかり忘れてるなんて!お祭り大好きなナナミちゃんとしては大失態だ。
私たちの誕生日、それは私たちが『誕生日』を知った日。一緒に過ごす2日間が始まった日。
あの日以来毎年私たちはお互いにお祝いをした。豪華なご飯があったわけではないけど自分たちでできる精一杯の遊びをして楽しんだ。二人が軍に入ってからもこの日だけは何かと理由をつけて帰ってきてくれてた。そんな日だ。
「わーすごい!!!」
執務室の中にはいつもより豪華なご飯とフルーツなどのデザートが綺麗に盛られていた。
「これ3人で食べるの?」
「ハイ・ヨーに何か簡単なものをと言ったら張り切りすぎてしまいまして」
シュウさんが渋い顔で答える。「わたしに任せるよーー!!」というハイ・ヨーさんの元気な声が聞こえた気がした。
3人で食べるには多すぎる量なのでアップルちゃんやフリックさん、ビクトールさんたちも呼んでちょっとした食事会が始まった。たくさんの人に祝ってもらい、会話もひと段落したところでもう一人の主役の隣に立って声をかける。
「今年は賑やかだね!」
「そうだね」
わたしが声をかけると気を遣ってくれたのかみんなスッと移動し二人だけにしてくれた。
「たくさんの人が祝ってくれるなんて不思議だね」
「うん」
「ご飯も美味しいし」
「そうだね」
「1年前には想像もしてなかったね」
「そうだね」
去年はいつものように3人で祝った。特に何をするわけでもないけどたくさん話たり、体を動かしたりした。そんな去年までと違う今年の誕生日。たくさんの人と美味しいご飯に囲まれた賑やかな誕生日。でもその人の輪の中にいつも一緒に祝ったはずの彼はいない。でも……。
「明日からまた出かけるんだよね?わたしも一緒に行くからね!」
「そういうと思ったよ」
苦笑いで答えられる。だって行った先でジョウイに会えるかもしれないじゃない。その時は絶対「おめでとう」って伝えるんだ。たとえ遅くなったとしても。しょうがないなんて諦めてやるもんか。
わたしの気持ちなんてお見通しとばかりに笑っているもう一人の主役ににこりと微笑んで、手にしていたケーキをパクリと頬張った。
そんな私たちの様子をみんな笑って見ていた。