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    こいと

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    ※メポコビ
    コビの誕生日に上げたお祝い文。ド健全なお付き合いをしているメポコビで、ちょっとだけ大人の階段を上りたいコビの話。

    #メポコビ
    mepokovi
    #コビめっぽう2

    あと一歩分だけふわふわとした、どこか浮ついた気持ちが抜けない。自分が生まれてきたことを誰かに祝ってもらえる。それがこんなにも嬉しいことだと初めて知った。
    「……ふふ」
    「なんだよ。思い出し笑いか」
    「すみません。……だって皆さんが僕のために誕生日パーティーを開いてくれるなんて、嬉しくて」
    5月13日。任務と訓練を終えたコビーがヘルメッポに促されるまま会議室に向かえば、そこにいたのはガープやボガードはじめ隊の海兵達。
    いつの間に準備したのか、いつもは難しい話をするための会議室は飾り付けられ、テーブルの上には食堂から運んできたのだろう料理と大きなケーキ。
    何が起きているのかわからずぽかんと口を開けて呆けたコビーに「コビー准尉!誕生日おめでとうございます!!」と部下の一人が声をかける。
    そこでようやく「自分の誕生日パーティーを開いてくれたのだ」と気付いて、ぼろぼろと泣いてしまったのが2時間ほど前。
    料理もケーキも美味しかった。隊の皆が金を持ち寄って買ってくれたプレゼントもずっしりと重い。
    しかしそれよりも何よりも、皆がコビー一人の為に準備し、祝ってくれた気持ちが嬉しかった。
    発起人はガープとのことだが、いくらコビーが孫のような年代であってもまさかこんなに盛大に祝ってくれると思っていなかった。そもそも、誰かに誕生日を祝ってもらった記憶などあっただろうか。
    嬉しくて胸がいっぱいで、ふわふわとした気持ちが収まらない。

    料理がすっかり食べ尽くされ、酒の入ったガープが陽気になりすぎた頃合いにお開きとなり、片付けは部下達が買って出てくれた為甘えて先に部屋に戻って来た。
    貰ったプレゼントをテーブルに置き一息ついたところで、ヘルメッポに呼ばれる。
    「コビー、これ」
    「え?なんですか?」
    「なにってプレゼントだよ」
    「え、だってあの中にヘルメッポさんの分も入ってるんですよね?」
    差し出された黄色い包装紙でラッピングされた箱。小ぶりなそれと、今テーブルに置いたばかりの大きな箱を見比べる。
    ガープ隊の皆が少しずつ金を出し合って買ってくれたプレゼント。ガープ含め全員が参加したらしき出資金の中には当然ヘルメッポの分も入っている。
    「ばーか。あれは隊の部下としてだろ。……恋人の誕生日に全体でまとめたモンだけで済ますやつがあるかよ」
    少し気恥ずかしそうに顔を逸らしながらの言葉に、浮ついていた心が別の意味で飛び上がる。
    「恋人」少し前に二人の関係性に加わった肩書きに頬が熱くなる。それと同時に嬉しくて、幸福感がじわりと広がる。
    隊の皆がくれたプレゼントも勿論嬉しい。だが唯一無二の愛する人からのものは、それとはまた別格なものだ。
    「あ、ありがとうございます。……えへへ、嬉しいです」
    受け取ると、堪えきれずにふにゃりと破顔しぎゅっとプレゼントを抱き締める。そんなコビーの様子にヘルメッポも嬉しそうに微笑んで桃色の髪をわしゃわしゃと撫でる。
    考えてみれば二人が出会い、そして海軍に入隊してまだ1年も経っていない。だが全くそんな気がしないくらい、もう何年も経っているかと勘違いするほどに濃い時を過ごしている。コビーにとってもヘルメッポにとっても、間違いなく人生で一番濃密な時間だ。そしてそれは現在進行形である。
    そんな中でどんどん変化していった二人の関係も、こうして喜ぶコビーの顔を見て幸せと愛おしさを感じるくらいには濃いものになっていた。

    「……ねえヘルメッポさん、僕17歳になったんです」
    「おう、そうだな」
    「ヘルメッポさんは20歳ですよね」
    「おう」
    「ふふ、ねえ気付いてますか?僕達今3歳差なんですよ」
    4年の年齢差。生まれた年による差は、当人が何をどう頑張っても永遠に縮まることはない。
    だが今だけは、コビーが先に一つ年を重ねたことにより変化が起きる。7月にヘルメッポの誕生日がくるまでのたった2ヶ月間だけ、二人は3歳差だ。
    決して4年が3年に縮まったわけはなく、厳密には生まれ月による表示上の誤差のようなものでしかないが、同じ4歳差でも「成年と未成年」という大きな壁がある二人の関係においては、その壁が低くなったようでコビーにとっては嬉しかった。
    「なんだかちょっと大人になったような気分です」
    「まあ実際一歩大人に近付いたんだしな」
    「…………ヘルメッポさん、もう一つ欲しいものがあるんですけど」
    今までのプレゼントに喜ぶ子供の表情とは違う、少しだけ大人びた、いや大人になりたそうな「恋人」の表情。
    「大人に近付いた」というワードに、普段抑えている願望が少し顔をもたげてしまった。
    頬を赤らめ、期待と不安が入り混じった目でヘルメッポを見上げる。
    「一歩ぶん、大人なことしてください」

    まだ16歳のコビーの体を慮り、また対外的にも関係が漏れた場合全責任を負うのは成人のヘルメッポになるため、二人は恋人でありつつもひどく健全な関係だ。ハグやこっそり手を繋ぐなど、仲の良い友人としてギリギリ誤魔化せる範囲の触れ合いしかしていない。
    その先に進むのはコビーが18歳になってからと約束していた。それは互いに納得してのことだけれど、一つ年を重ねたことで欲望がむくりと湧き上がる。
    少しだけでいい。誕生日プレゼントという名目で、少しだけいつも以上の触れ合いをしたいと思ってしまった。
    「……だめ、ですか……?」
    「…………」
    数秒逡巡するように黙る。なし崩しになってしまうことを恐れ、今まで二人で決めたラインを絶対に越えないようにしてきた。たとえ誕生日といえどもヘルメッポがダメだと言えば諦めるつもりではいたが、即答されずに迷う素振りを見せられるとどうしても期待してしまう。

    沈黙の後、ヘルメッポは愛用のサングラスを外しテーブルに置くとコビーに向き直る。
    「今日だけな」
    そう言ってするりとコビーの丸い頬に右手を添え、反対側に顔を寄せる。
    ちゅ、と軽いリップ音を立てて耳に唇が触れる感触。子供の戯れのような軽いそれは、しかし今までの禁欲的な触れ合いに比べれば余程恋人同士の行為だった。
    添えられたヘルメッポの親指がコビーの唇をなぞる。ざらりとした手袋の感触。
    「ここは来年、18になってからな?」
    「は……はい…………」
    鼻先が触れそうなほど近くで笑うヘルメッポの「大人」の顔に、ぼっと熱が上がる。キスされた耳まで熱い。
    もう一度今度は傷跡の残る額にキスを贈ると、再度コビーの目を見て微笑む。
    「誕生日おめでとうコビー。生まれてきてくれてありがとな」
    「っ……ありがとう、ございます……!」
    思わずぎゅっと抱き着く。埋めた肩口から香る香水とヘルメッポ自身の匂いにも胸が高鳴る。
    ほんの少し、一歩ぶん進んだだけの行為も、大切な人からの生まれたことを祝ってくれる言葉も、全てが嬉しくて愛おしくて幸せで、ドキドキして仕方なかった。
    「ヘルメッポさんの誕生日もお祝いさせてくださいね」
    「おー、楽しみにしてるぜ」
    誕生日とはこんなにいいものなのだと、17年目にして初めて実感できた気がする。約2ヶ月後の恋人の誕生日にはどうしようかと、ふわふわとした幸福感が抑えきれなかった。
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