台風日和 毎朝流れる天気予報が当てにならない日もあるのだと、月島は鉛の空を仰いだ。商店街のアーケードの下、重々しいどしゃ降り雨をなす術もなくただ見上げることになるとは。
夜には台風が近付くらしい。本日の業務を早めに切り上げ、その足で鯉登が食べたいと言っていた、商店街のケーキ屋へと寄り道をした帰りだった。
予定時刻よりも随分早くにやってきた禍々しい黒い雲に、月島は呆気なく捕まってしまったのだ。ほんの帰り道程度ならばと、傘を事務所に置いてきた数十分前の己を呪いたい。
「……風も出てきたな」
アーケードから僅かばかり身を乗り出して、掌で豪雨の圧を感じ取る。周囲を眺め渡せば、ゴミや塵、どころではなく、駐車禁止の三角コーンや商店の立て看板が大きな音をたてて強風に吹き飛ばされかけていた。明け方のうちに、雨戸をしっかりと閉めておいて正解だったと胸を撫で下ろす。
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