ガラス越しのかくれんぼ 3*
月島への言動は品があって隙がなく、眼鏡で目元の表情が見えにくいのもあって、怜悧で作り物めいていた。それだけなら住む世界が違う、近寄り難い相手であるというだけだった。
落ち着かない様子で顔を赤らめ、横に流した前髪の毛先を指で耳にかける仕草を目にすると途端にマネキンから血と温度のある人間に変貌する。住む世界が違っても心臓の脈打つ人間なのだと感じた。
鯉登がメモに予約の日時を書き、月島に手渡してきた。きれいな、整った字だった。
どうも、とそのメモを折り曲げ、ズボンのポケットにしまう。しまってから、きちんと鞄に入れるべきだったかと少し恥ずかしくなった。
鯉登は特に気に留めず、店を出る鶴見と月島への見送りにつき従い、粛々とした様子で頭を下げた。つられて月島も会釈する。鶴見は微笑みと僅かな頷きで返した。
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