月島の作業着を洗い終え、極力皺が寄らぬようにしっかりと伸ばしてから庭に干す。鯉登の日課だ。
この町にやって来るまで、洗濯機のひとつもまともに回すことのできなかった鯉登が、今やアイロン掛けまで見事にこなせるようになった。
梅雨明けを告げたワイドショーの言う通り、本日の天候は快晴。ようやくの部屋干し地獄からの解放で、洗い終えた洗濯物を抱え込んだ鯉登は、すぐさま庭に飛び出した。
容赦なく降り注ぐ日光の中、濡れた作業着を面前に掲げ、二、三度空中に叩きつけると、胸ポケットの部分が妙に膨らんでいることに気が付いた。
「ん?忘れ物か?」
首を傾げ取り出してみれば、ぐしゃりと潰れた煙草とマッチ箱。どちらもまだ、十本程残っている。洗濯機の中で洗い揉まれたその二つは、最早使い道のないゴミ屑同然と成り果てていた。
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