死にゆく恋に泥む玉章[後編] 頬が濡れる感触に、意識が引き戻された。ゆっくりと目を開く。視界は相変わらず不明瞭で、固い岩場に横たわっていた全身が軋むように痛んだ。徐々に視界が闇の暗さに慣れてくる。仰向けに寝転んだアシュトンの視界に、氷柱にも似た鍾乳石が飛び込んできた。頬を濡らして覚醒を促した水滴は天井から滴り落ちたものらしい。
上体を起こして辺りを見渡す。アシュトンの気配を察してか、傍らで横たわっていた双頭龍の青い頭が一つ首をもたげた。
アシュトンと共に宝珠に触れ、過去に飛ばされて来たギョロとウルルンも記憶は残っているようだった。憑かれていたときのような明確な意思の疎通は出来ない。それでも敵意のない再会がアシュトンは嬉しかった。やっとアシュトンを覚えている存在と出会えた。両手に余る龍の二つ首を力いっぱい抱き寄せて再会を喜んだ。
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