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    【冬彰☕🥞】
    『離別の夜。』
    ずっと、これからだったのに。
    相棒であることをやめた、あの夜。離れて気付けた想いがあった。



    プセを知り、バドに惹かれ始めた時期にまんまと私を沼に嵌らせたのが例の曲でした。
    その時にクソデカ感情をぶつけ衝動的に書いた、雰囲気小説。

    ※誤字脱字知識抜け等至らぬ点が多々ありますがご容赦下さい。
    2023.3.12

    #腐ロセカ
    BL prsk
    #冬彰
    dongChang/Touya Akito

    離別の夜。────────────────────


    『俺はもう、お前と一緒にはやらない』
     あの言葉を投げられた時、一瞬、目の前が真っ暗になった。意識が遠退き、つま先から脳天まで急速に冷えていく感覚。俺達は…同じ夢を追いかけていたのでは、なかったのか。

     〝RAD WEEKENDを超える。〟

     それは当時中学生の少年が口にするにはあまりにも大きな夢だった。それ程に、WEEKEND GARAGEの人々にとってあの夜は伝説の一夜として記憶に残っている。その胸に、脳に、深く熱く刻まれているのだ。
     周りの大人達がバカみたいな夢だと鼻で笑い見向きもしない中、オレの夢を笑わずに受け止めてくれた人がいる。それが、冬弥だ。
     あいつの綺麗に伸びる歌声に惹き付けられた夜から、オレ達はなるべくして相棒になったんだと思っていた。そして冬弥に別れを告げられるその瞬間まで、その関係に疑いを持ったことは無かった。
     ───けれど、どうだろう。実際に蓋を開けてみれば、誰よりも近くで夢を追いかけていた筈の相棒に捨てられてしまう始末。

    『お前もそろそろ大人になったらどうだ』
    「…っ」
    『たかだかこの街でだけ有名な、小さなイベントなんて追い掛けていないでな』

    「……はは、ざまあねぇな」
     思わず口から零れた言葉。情けない程に声が震える。なんて、惨めな声なんだろうか。誰にも聞かれないその声は、余韻すら残さずに夜の闇に呑まれてしまった。
     見慣れた街を歩む。光り輝くネオンや、ライブハウスから漏れ出た重低音がビートを刻むこの街。普段であれば心地好く身を委ねる喧騒も、今は何処か遠くに感じる。
     大人とは、なんだろうか。脳裏に鮮明に焼き付いたあの夜を、小さな少年の胸に抱いた大きな夢を、捨ててしまうことだろうか。冬弥の隣で追い掛けてきた、かけがえのない夢を。
     もっと早くに、夢と共にこの〝想い〟を捨て、大人になっていれば…オレはまだ今も、冬弥の隣に立てていたのだろうか。

     オレは、冬弥のことが好きだった。オレの夢を受け入れ、無茶な練習にも文句ひとつ言わずに付き合って、誰よりも真剣に向き合ってくれた、あいつのことが。初めて二人で立ったステージ、初めて誰かと追いかける夢。誰かが傍にいることの尊さを教えてくれた、あいつのことが。

     みんなみんな、何処かに行ってしまって、この世界に独りきりになったような感覚に呑まれていく。これまで積み重ねてきた時間の全てが無かったことに、零になったような感覚。オレの知る街の景色が崩れていく。追い掛けていた夢の形を失っていく。どろどろとした思考が頭の奥を侵食していった。
     今、オレの隣に───冬弥は、いない。





    『たかだかこの街でだけ有名な、小さなイベントなんて追い掛けていないでな』

     確かに自分が彰人に投げつけた言葉だというのに、それを聞いた瞬間の彰人の表情が目の奥に焼き付いて離れない。
     どれだけ周囲に馬鹿にされようと、それを跳ね除けるだけの努力を重ねてきた彰人の強さは誰よりも知っている。だけど、そんな彰人の、あんなにも傷付いた表情は、俺がこれまでに見たことが無い表情だった。そしてそれを思い起こす度に、後悔の念が湧き上がりそうになる。今の俺はとても家に帰れる状態には無く、落書きだらけの路地裏に背を預けるとずるずると座り込んでいた。
     自ら彰人の傍を離れる決心をして、彰人を酷く傷付けて…それなのに、まるで被害者のように後悔に浸るなんてことだけは、絶対にしたくなかった。だけど、これから先、もう彰人の隣に立つことが出来ないと理解すると、どうしようも無い孤独に包まれていく。

     必死に夢を追い掛け、自分にも他人にもストイックに努力を重ねる彼の姿は、今まで出会って来たどんな人間よりもきらきらと輝いて見えていた。そしてその輝きに目を奪われる毎に、果たして俺は彰人と同じ夢を抱けているのか、その夢を大切に出来ているのかと、不安が募り膨らんでいってしまった。
     そして、白石と小豆沢に出会う。白石は、あの二人は、確かに彰人と同じ夢を抱いていた。小豆沢と話してみて思った。ずっと彰人の隣で、何かを壊してしまうかもしれない不安と表裏一体で歌ってきた俺よりも、彼女の方が余程相棒の夢に寄り添い、覚悟が出来ているのでは無いかと。そしてその瞬間、中途半端な覚悟で彰人の隣に立とうとしてきた自分の浅はかさに気付いてしまった。誰よりも彰人の夢を邪魔をしていたのは───俺だ。
     だから、彰人を拒絶するように離れる選択をした。あいつが、俺を追い掛けようなんて思わないように。
     痛い筈の左胸は、寧ろ恐ろしい程に空っぽに感じる。俺の心臓はきっと、彰人の許に置いてきてしまったんだ。彰人がいないと、生きている実感すら湧かない。俺が此処にいるのかも、曖昧で。この街で息すら出来ない。

     こうして独りになった今、気付いた事がある。俺は、彰人が好きなんだ。ずっとずっと、夢を追い掛けるその姿を尊重し、愛していきたいと思ってしまっていた事を、漸く自覚出来た。
     けれど、こんな想いに気付けたところで…もう、俺の隣に彰人はいない。そしてこれからも、もう二度と、彼の隣に立つ事は出来ない。
     彰人の隣にいれば爛々と輝いて見えたこの街の景色が、今は滲んでぐしゃぐしゃに歪んでいた。
    ぽつりと、頬を濡れた感触が伝った後、間も無くして訪れた雨音が街の喧騒を掻き消した。





     どうやって家に辿り着いたのか、帰り道の記憶が無い。いつの間にか降り始めた雨にも気付かずに歩いていたようで、オレが帰宅するのと同時に、たまたま部屋から出ていたらしい絵名と鉢合わせた。興味無さげに此方を一瞥した瞳が、次の瞬間には大きく見開かれて再度こちらを見る。
    「ちょ…っと⁉あんた何やってんの?びしょびしょじゃない…!傘持ってなかったの⁉」
    「…ああ、悪い」
     家の中が濡れるとか、風邪を引いたらどうするんだとか、ぎゃあぎゃあと続いていた絵名の言葉は、オレの謝罪と共に止まった。素直に謝るオレに驚いたのか、何かを察してなのかは、すぐに絵名に背を向けたオレには分からなかった。今はとても人と言葉を交わす気分にはなれず、静かに自室の扉を潜ると、扉を閉めた。
    「…なんて顔、してんのよ……」
     扉の向こうで絵名が何かを呟いたような気もしたが、窓を叩く雨音が邪魔をして、オレの耳には届かなかった。

     濡れた上着を辛うじて床に脱ぎ捨てて、倒れるようにベッドへ体を沈める。思考はどろどろに侵されたまま、明かりも点けない室内では視界がより不鮮明に霞んでいった。受け入れ難い現実と向き合おうにも、暗転していく視界では網膜に焼き付いた先刻のやり取りがフラッシュバックする。その代わりに、止むことのない雨音や、微かに香る雨の匂いが、これが現実であることを嫌な程に伝えてきた。

     初めは、一人で追い掛けていた夢。冬弥と出会ってからは、二人で追い掛け始めた夢。いつしか、二人で夢を追い掛けるその時間自体が、まるで夢物語のように心地好いものになっていた。
     夢を、自分を、受け入れてくれる存在というのは、こんなにも心地好く離れがたいものなのかと。真剣な眼差しで、二人の夢を叶えようとステージに立ち汗を流すその横顔は、いつもきらきらと輝いていて、俺の視線を奪っていく。そんな姿を見せられて、惹かれない筈が無かった。恐らくこれが、恋という感情だ。初恋、だった。
     だけどオレ達はまだ、成人にも満たない高校生で。ましてやオレとあいつは性別だって同じで。そもそも、オレの言い出した夢と真剣に向き合う冬弥を裏切るようなことだけは絶対にしたくなかった。胸の奥で産声を上げた感情は、とても彼に伝えられるような想いでは無かった。
     だから、気付いた想いには早々に見て見ぬふりをして。成功も失敗も、二人で壁を乗り越え喜びを分かち合うその時間だけを大切にしていれば、きっと冬弥の隣にいることを許してもらえると、そんな気がしていたのに…きっと、その考えすら甘かったんだ。きっと、罰が当たったんだろう。

     そうやって混濁した思考の中を次々と侵していくほの暗い感情に身を委ねるオレの姿さえ、女々しくて反吐が出る。でも、ここまで自己嫌悪に浸ってみても───今からでもいいから、あいつの隣に戻りたい、なんて。
     蓋をしたと思っていた想いは、蓋をこじ開け溢れ出て、収拾すらつかないところまで大きくなっていた。
     本当に、オレは馬鹿だ。
     一層の事、この想いごと無かった事になれば。捧げた想いを取り返してしまえば。何度そう願っても、一度生まれた想いを無かったことにするなんて無理な話だった。それどころか、今も思ってしまっている。もう一度……お前の隣に、戻れれば。
     
     これからだったんだ。あいつと音を重ね、歌を重ね、幾つもの夜を乗り越えて。そうしていつかは掴み取る夢の景色を、他でもない、あいつと見たかった。そして伝説の先も、これから先も、ずっと。これからだったのに。ずっとずっと、これから共に歩んでいきたかったのに。
     分かっている。「ずっと」なんて、それこそ絵空事だと笑われてしまうことも。世間から見れば、それはあまりにも幼稚な、狭い世界で生きている子供の戯言に聞こえるのだろう。
    それでも、オレの夢を信じてくれたあいつとなら、そんな絵空事だって叶えていける気がしていたんだ。オレが夢を語れる存在は、信じられる存在は、ずっと一緒にいたい存在は、冬弥だけだったんだ。
     でも、一緒に組もうと声を掛けたのも、一緒に夢を追い掛けようと語ったのも、〝相棒〟という関係を求めたのも、今思えば全てオレからだった。オレは、頼り頼られて、支え支えられて。そんな関係を冬弥と築いていきたかった。
     こんな想いは、俺の独りよがりだったのかも知れない。もしかすると、隠した筈の好意にさえ、あいつは気付いていたのかも知れない。

     額に翳していた手の甲を目元に押し付ける。目の奥が熱い。零れそうな嗚咽を必死に噛み殺す。せめて、最後に、呼んで欲しかった。

     ───貴方から「相棒」と、言って欲しかった。





     一体どれだけの時間が経ったのか。大した屋根も無いこの場所では俺は全身ずぶ濡れで、その寒さに体の震えを自覚した頃には補導されるぎりぎりの時間だった。流石にこのままではいけない、警察沙汰にでもなれば父さんに外出すら止められるようになるかも知れない。と、慌てて立ち上がったところで気付いた。
    「…あ」
     …もう、この街を訪れることも、なくなるのだと。夜に出歩く必要も無い。外出の許可を取る必要さえ無い。また、独りに逆戻りだ。
    そのあまりの心細さに、零れた息が微かに震える。

     何度も自分に言い聞かせているのに、心が追い付かない。まるで心がここに無いかのように。彼といる時だけは、滾るような高揚を抱けた筈の俺の心臓は、とっくに彼に捧げていたのかも知れない。
    日々夢を追い掛け、喜怒哀楽、様々な感情に打ちのめされながらも進むことを止めない彰人。誰よりも近くで見て来たその姿に、横顔に感じたあのきらきらとした煌めきに、目を奪われていた。他の何も、目に入らないぐらいに眩しくて。
    (…そうか、俺は……)
    「…彰人のことが、好きなんだ」
     どうしてこんなにも胸が苦しいのか、漸く自分の抱いていた想いに気が付く。
    何も無くなってしまった俺に夢を与えてくれて、俺のことを相棒だと呼んでくれた彼の存在は日に日に大きくなっていった。毎日毎日、二人で夢も、時間も、感情も、共有していくうちに、想いが積み重なり、いつしか愛情に変化していたんだ。
    離れた瞬間に孤独に突き落とされてしまう程に、もう彼無しでは心を保てない程に、取り返しがつかない想いを抱えていたらしい。

     こんな邪な感情に気付いてしまった以上、尚更、彰人の許には戻れない。そもそも、彼の何よりも大切な夢を踏みにじるようなことを言ってしまったんだ。許されることもないだろう。
     けれど本当は、…本当は、彼の傍にいたかった。同じ夢を目指したかった。夢の先も、ずっとずっと、彼と一緒にいたかった。
     悔しさに視界が滲む。雨で張り付く髪が鬱陶しい。俺はいま、どんな表情をしているのだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。
     ずっと、ずっと、これからだったのに。二人の夢はまだ途中だったのに。夢を叶えた後も、きっと彰人とならずっと共に歩んでいけると思っていたのに。なんて、馬鹿なことをしてしまったのだろう。こんな感情を抱く自分が許せない。
     もう叶わないけれど、本当は彼に、言って欲しかった。伝説の夜だけではない。夜の先も、ずっと…相棒は、お前しかいないんだと。

    「「貴方から言って欲しかった」」


    ────────────────────
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    ずっと、これからだったのに。
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    その時にクソデカ感情をぶつけ衝動的に書いた、雰囲気小説。

    ※誤字脱字知識抜け等至らぬ点が多々ありますがご容赦下さい。
    2023.3.12
    離別の夜。────────────────────


    『俺はもう、お前と一緒にはやらない』
     あの言葉を投げられた時、一瞬、目の前が真っ暗になった。意識が遠退き、つま先から脳天まで急速に冷えていく感覚。俺達は…同じ夢を追いかけていたのでは、なかったのか。

     〝RAD WEEKENDを超える。〟

     それは当時中学生の少年が口にするにはあまりにも大きな夢だった。それ程に、WEEKEND GARAGEの人々にとってあの夜は伝説の一夜として記憶に残っている。その胸に、脳に、深く熱く刻まれているのだ。
     周りの大人達がバカみたいな夢だと鼻で笑い見向きもしない中、オレの夢を笑わずに受け止めてくれた人がいる。それが、冬弥だ。
     あいつの綺麗に伸びる歌声に惹き付けられた夜から、オレ達はなるべくして相棒になったんだと思っていた。そして冬弥に別れを告げられるその瞬間まで、その関係に疑いを持ったことは無かった。
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