台所の下心「三井サンまだ?」
匂いにつられたのか、ブランケットを肩から羽織ったリョータがひょこりと顔を出す。
男2人立ってても狭くないキッチンは、同棲するための新居を探すときに、三井が「2人で共同作業したい、あわよくば宮城の手料理が食べたい…!」という下心の元、リョータにも内緒で不動産屋に頼み込んだ代物だ。残念ながら、リョータが包丁を握ることは3年経った今でも無い。
「んー、もうちょい。」
「ふーん」
興味なさげな声とともに、腹に腕が回され、肩にちょんと重みが乗る。どうやらここで夕飯の完成を待つらしい。今ではすっかり見慣れた光景であるが、初めてこの体制を取られた時は、正直呼吸が止まった。背中に感じる体温や首元に掛かる息遣いの生々しさに、恐ろしいほど心臓が跳ねて、嫌じゃないかと恐る恐る顔色を窺ったリョータに「三井サン顔赤!!!!」と爆笑されてしまったのもいい思い出だ。
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