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    nagi

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    nagi

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    🍾💙甘えん坊ルシファー再来につき公開中。ウエスタンデートありがとう。
    どこかで書いたと思ってたんだけど、自分用にしか残してなかったから上げ直し。
    たまのバブみ甘やかすの大好き。

    #obm
    #ルシファー
    lucifer

    ギャップ萌の最高峰魔界に来てしばらく経過した頃から気づいていたが、ルシファーの行動を予測することは実はそんなに難しくない。
    夕飯までには必ず兄弟チャットに一言入るからである。

    『後で食べる。置いておいてくれ。』
    と入った時は、「仕事が終わり次第、早い時間に帰る」の意。

    『外で食べて帰る。』
    と入った時には、「割と遅くなる」の意で、大体22時は過ぎてくる。

    『ディアボロと会食だ。』
    などと入って仕舞えば午前様は免れず、酔って帰ることもしばしばだ。

    なぜこんな話をしているかというと、私が最近、ルシファーを出迎えることにご執心だから。
    前に一度「ただいま、後で来てくれ」と酔ったルシファーからチャットが来たことをきっかけに、私は誰に言われるでもなくルシファーを出迎えるようになった。なにも言われなくても飛び出してくる私を見て、喜んでくれるルシファーに絆されたのは私。多分これは、普段おくびにも出されない本心なのかもと思った私からの、ささやかな愛情のお返しである。
    ルシファーも初めの頃は、起きていたのか、やら、寝ていてもいいんだぞ、とか、こちらを気遣う素振りを見せていたのだが、最近では出迎えを咎めることは無くなった。諦めたのか、素直に「ただいま」と言ってくれるのは嬉しいものである。

    さて、そんなルシファーからの本日の連絡は……『ディアボロとの食事』を匂わせる一言だった。
    それなら私の出番はもう暫く先だろうと踏んで、先にお風呂を済ませておこうとバスルームへと向かった。私の部屋にはシャワールームは備わっているものの、湯船に浸かりたい時は共用のバスルームを利用させてもらう必要がある。それゆえ、絶対に誰にも会わない時間帯、言うなればなるべく深夜に近い時刻を狙うのが常になっていた。

    「22時か……少し早いけど……今なら誰もいないよね、きっと」

    必要なものをまとめて持って、今日は贅沢にバスボムなんかも入れちゃおうとルンルンバスルームに向かった。
    そうして数十分後。
    満足行くまでバスタイムを楽しんだ私は、髪を乾かしながら、ふと、D.D.D.の画面を開き驚くことになる。

    『ルシファー:今帰ったよ』
    「!?」

     その五文字を目に留めた途端、すぐにドライヤーを片付けて荷物をまとめ、部屋着代わりのパーカーを羽織ってバスルームを飛び出した。チャット受信時刻はほんの数分前だったけれど、「今帰って」からこれだけ時間が経っていれば、自室についている頃かもしれない。そう思えど、念の為玄関から先に……と足早にそこに向かうと。

    「え……?る、ルシファー、何してるの……?」
    「む…………」

    嘆きの館は人間界でいう海外風の造りだ。なので外履の靴で歩き回るか、部屋履きのスリッパを利用するかの二択。私はスリッパを利用することも多いけれど、ここでの暮らしの長い兄弟たちは基本的に外履でうろうろしているはずなのに、なぜかルシファーは、玄関前の長椅子に腰をかけて、自分の靴を一生懸命脱ごうとしているではないか。
    こちらに向いた顔は少し赤く染まっていて、目はとろんとしている。これは間違いなく酔っているルシファーではある。
    でも、流石に、そんなに頑張って靴を脱ごうとしているのはなんで?、との疑問は拭えず、つい子どもを諭すような口調になってしまった。

    「靴、どうかしたの?足でも怪我した?ルシファー、大丈夫?」
    「……おまえこそ」
    「え?わたし?」
    「おかえりって言ってくれなかった」
    「………………は?」
    「だから待ってた」
    「え、あの、っ!?」

    ルシファーが長椅子に座っているせいで、珍しいことに私が見上げられる立場にあるこの状況は、私の心を高鳴らせる。
    潤む瞳は私を熱っぽく見つめ、伸びてきた腕は徐に私の腰に回って優しく引き寄せられた。
    酔っているだけ、これは酔っているからこその表情だと言い聞かせても、母性が疼いて仕方ない。

    「る、しふぁ、」
    「ん……いい香りがする……風呂に入っていたのか」
    「うっ、う、ん、ルシファーが、帰ってくるの、もうちょっと遅いかと思って先に入っちゃってたの。だから、遅れちゃってごめんね……?」
    「…………」
    「?ルシファー?」
    「……」
    「大丈夫……?眠くなっちゃった?」
    「……す……たら……す」
    「……っ……!あ、の、ごめん、聞こえなかった。もう一回言ってもらってもいい?」

    ギュゥっと私を抱きしめて、腹に顔をうにうにと擦り付けているルシファーに「うっ!!かわいい!!」と殺されかけながらもなんとか言葉を紡げば、スッと離れたルシファーは、余計に赤くなった目尻を細めてとんでもない高慢なお願いを口にした。

    「キスしてくれたら許す」
    「へ、」
    「おまえから、キスしてくれ」
    「!?」
    「ん、」

    レアすぎるルシファーのキス待ち顔。そんなものを見て平常心でいられるほど私は達観していない。
    魅せられてしまった。美しい悪魔に。私の羞恥心は、もはや胸を逸らせるトリガーにしかなっていなかった。
    ゆっくりとかがめた腰。近づく唇。呼吸が混じり合い、熱がーーーー

    「何してんのリア充があああああああーーーーー!?!??!?!??!??!?!?!?」
    「!!!?!?!?!??!?!」
    「む。ん、」
    「っ〜〜ぅン!?!?!」

    夜中に似合わないどでかい声が玄関ホールに響いた。声質よりもわかりやすい叫ばれた内容にバッと離れようとした私の首をルシファーの手がグッと抑えたせいで、我に返ったにも関わらずそのまま唇が触れ合い、あろうことか遠慮なく入り込んできた舌は私の舌を簡単に絡め取り、逃すことはなかった。

    「ん、っふ、ぁ」
    「ンん……はっ、ふ、……ん」
    「そういうことは部屋でやれバカモノーーーーーわああああああん!!!!!!!!!!」

    私たちがレヴィの姿を視界に入れる暇もなく、耐えられなくなったレヴィはそのまま踵を返してしまった。
    体勢を崩した私はルシファーの膝の上に招かれて、あれよあれよという間に長椅子に押し倒される。あまりにも性急な動作に絆されそうになったものの、するりとシャツの間をぬって熱い体温が侵入してきたことで意識が覚醒した。

    「っ、ま、んん、ルシ、っちゅ、ん、るしふぁ、んぁ……!」
    「ふ、ハァ、ん…………くるしかったか……?」

    私がルシファーの胸板をぐいぐい押すので勘違いしてくれたのか、少しだけ離れた唇で、やっと言葉を発することを許される。さっきまで瞳を潤ませていたのはルシファーだったはずなのに、今涙目になっているのは私なのだからいただけない。荒い呼吸を繰り返す私を他所に余裕のルシファーはペロリと口の端の唾液を舐め取りつつ首筋に甘えてくる。
    キュンと心臓が締め付けられてまた流されそうになるも、自分を律し、背に回した手で彼のコートをくん、と引っ張った。

    「るしふぁ、だめっ」
    「ん……どうして……おまえだってその気に」
    「場所!場所!ここではだめ!」
    「……んん……」

    まだ酔いから完全には覚醒していない様子のルシファーをなんとか自室に戻らせなければと頭をフル回転。
    そうして私が発した言葉は、とっておきの『お願い』だった。

    「ルシファーのお部屋がいいの」
    「俺の……部屋……」
    「そうだよ、こんなところじゃなくて、ベッドでゆっくり愛してほしいな……だめ?」

    渾身の演技で頼み込む。これでだめならステイするしかないと心を決め、暫く返答を待つ。
    数秒が数分にも感じられて、これ以上待てない、と「ス」と口に出そうとした、その時。
    腕を引かれ、かと思えば、私の身体はふわりと宙に浮いた。

    「!」
    「珍しく、おまえからのおねだりだ。部屋に行こう」
    「るしふ」
    「ただし、寝られないのはわかっているな」
    「へ?」

    ニヤリと上がった口角。楽しそうに笑った紅の瞳。それらが示すものは、ルシファーの酔いは、随分前から醒めていたんじゃないか、私は、騙されていたんじゃないか、ということだった。
    気づいた時には、すでに遅し。
    この腕の中からは簡単に逃げられないことは、十分身体に刻まれている。
    可愛かったりカッコよかったりする、私の愛しい彼氏様にはどうやったって敵わないと、その首筋に縋った私は、「仕方ないなぁ」と笑ったのだった。

    「どんなルシファーも大好き」
    「そうじゃなきゃ、困る」


    余談ではあるが、次の日の朝の食卓。
    当たり前だけど、レヴィは私と口をきいてくれなかった。
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