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    nagi

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    nagi

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    サキュ嬢の集い

    ##サキュ嬢

     この魔界のサキュバスたちのゴハン事情はちょっと厄介である。その所以はもちろん、彼女たちのゴハンと言えば情事だからだ。ちょっと小腹が満たせればいいのなら、相手に触れておやつ感覚で生気を吸わせてもらえばいいのだが、やはりそれではお腹の減りは早い。
     本当ならば人間界にでも行って何も知らない相手にちょちょっと挿れて出して貰えばいい話ではあった。けれど今現在、ディアボロ次期魔王があれやこれやをきちんと整備したために好き勝手できなくなったので彼女たちにとっては大変な痛手だった。もちろん、ディアボロがサキュバスのためになにも策を講じなかったわけではない。サキュバスのゴハンどころ……人間界でいえば所謂風俗みたいな場所が作られて、双方合意の上で捕食関係に至ることが許されるようにはなった。とはいっても、それを受け入れられないサキュバスもいるはいるわけで……。
     それがここに偶然集まってしまった四人のサキュバスたちだった。彼女たち一人一人の生い立ちはそれぞれ語るとして、簡単な紹介をしてみよう。
     バルバトスの上についている一人。彼女は百戦錬磨を装っているが実際は本番をしたことがない初心ちゃんである。押し倒すところまでは強気でいくのだが、毎度その先までできずにちょいっと生気を吸い取って終わり。不足は大好きなイチゴミルクで補っているつもりだったが、そんなもので魔力が補完されるはずもない。少し休むために立ち寄ったお城のバルコニーで目眩を起こして倒れたところをバルバトスに拾われ、喰うはずが喰われた。それからバルバトスの虜である。
     その視線の先、アスモデウスについているピンク髪の嬢。彼女は口以外からソレを摂取したことがなかった。その方法は胎内に直接入れるよりもはるかに質が落ちる上に、最後にゴハンを摂取したのもかなり昔のことだった。ここまでホットミルクでなんとか頑張ってきたが最近お肌に艶がなくなってきたのが気に掛かって困っていたところ、街の大きな広告に載っていたアスモデウスに一目惚れ。なんとかして彼のアレが欲しいと彼主催のパーティーに乗り込んだりなんかしてお近づきになった結果、晴れてゴールイン。今ではナニする関係である。
     それからその隣のベルフェゴールについている彼女は、行き倒れ……ではなく、公園のベンチで居眠りしていた彼を見つけて「イケメンか!!??」と叫び、わずか三センチの距離でご尊顔をガン見していたところを捕獲された。そのときには使い魔はすでにベルフェゴールの形と瓜二つとなっており、それをみたベルフェゴールが「あんた、もしかして僕のこと好きなの?」と気づいたのがきっかけで彼と関係を持った。ちなみに彼女はコンセプトカフェ(いかがわしくない)で店員として働きつつ、お会計時にお眼鏡に叶う顔が良い男性にちょいと触れて生気を奪って空腹を満たす日々を過ごしており、まかないでもらえるランチについてくるミルクアイスが唯一の楽しみだったのだが、こんなところで眠ってしまう顔面国宝のかわいこちゃんを放っておけるものですか!私が守らなくて誰が彼を守るのだ!とちょっとズレた愛を胸に彼のお傍についている。
     ここで一つ追記しておくと、ごく一部のサキュバスは使い魔を持つのだが、それは彼女らのキュン度によってその姿を変える。キュンバロメーターが高い=魔力の相性がよい証明でもあるため、出会えたならばその人に添い遂げるのが幸せになる条件だとは、サキュバスの間では常識であった。
     話を戻そう。最後の一人は魔界の七代君主が長男のルシファーを、名前ではないばかりか「ちょぉなん」と呼び捨てる不遜な態度をとるサキュバス。しかしそれも致し方ないことなのだ。この魔界に生を受けて何を教わる暇もなく空腹に勝てなかった彼女は、道に落ちていたところをルシファーに拾われたのだから。ルシファーの魔力は強い。故に俺からやるわけには……と躊躇っている暇はなかったらしい、ということは添えておこう。実際どんな風にして過ごしているのかは、想像に難くはないのだから。

     さて、前置きが長くなったが、つまりそういう形で意図せず魔界の中心人物らについた四人のサキュバスはこうして顔を合わせてしまった。ゴハン事情が事情なので、そういう場所の外でサキュバス同士が顔を合わせることはあまりないのだが、なんと奇遇なことよ。
     互いに互いの姿を見て目をぱちくり。
     しかしその空気を破ったのはアスモデウス。
    「え!?みんな普通の顔してるけど相手とピーー(規制音)ーーでピーー(規制音)ーーしてピーー(規制音)ーーるってこと!?」
    「アスモデウス、少し声が大きいかと」
    「てかそういうアスモだってそうでしょ……」
    「そりゃあ僕はね!?牛乳風呂に一緒に入ったりー……ね♡わかるでしょ?」
    「お前たち……少しは恥じらいを持て」
    「ねぇちょっと待って!?ルシファーについてる子の使い魔、赤ちゃんみたいじゃない?」
    「突発的に話を振るな……」
    「あ、でも確かに……僕らのちっちゃいやつは悪魔姿なのにそうですらないし」
    「おや、するとその方、生まれたてなのですか?」
    「恐らく」
     そんな話を耳に挟みつつも、サキュバス側の会話も弾む。何せ久しぶりにみる同じ種族なのだ。
    「自分以外のサキュバスを見るの、何十年ぶりかしら」
     バルバトスの上にいた嬢がぽつりとこぼしたのに食いついたのは、ピンク髪が特徴的なゆるふわ嬢である。ちなみに嬢の谷間では小さなアスモがぱふぱふと常時胸を揉んでいる。
    「ってことは、みんなもゴハンどころには行ってないの?」
    「『も』ってことは、あなたもなんですか?」
     応えたのはアラビアンな服を着たパッチリアイメイクが印象的な嬢だ。ベルフェの顔をむぎゅっと掴むと、みなに見えるように上を向かせる。
    「だってみなさんも思いませんか!?せっかくなら上質、って!ベルフェのお顔は国宝だが!?奇跡に感謝……っ!」
     かと思えばワッと顔を隠して恥ずかしがるあたり、とても素直な性格らしい。サキュバスにしては清楚な印象を受けるが、果たして実際はどうなのだろう、と先に話していた二人が彼女をイジる。しかしそこにきて黙っていたもう一人が、おず、と声を発した。
    「あの……お腹が空かない程度のゴハンって、どのくらいの頻度で摂るものなんでしょう……?」
    「え?それはサキュバスごとにまちまちよぉ。私はずっと生気とイチゴミルクで耐えてきたけど、それだとやっぱり魔力が不足するのよねぇ」
    「私はミルクのお風呂に浸かりながらするのがだーいすき♡なかもそともあったかーいの♡アスモちゃんはパーティーで忙しいから、ゆっくりするのはいつも週末かなぁ」
    「ベルフェはちょっとするとすぐ寝ちゃうんだけどね。でも寝顔もかっこかわいいから我慢できなくってその間にちょっと襲っちゃったりも、する♡秘密だけど!」
    「……もしかして毎日じゃないんですか?」
    「「「え?」」」
     とんでもない言葉が生まれたばかりと称された嬢から飛び出して、サキュバスだけでなく悪魔四人も会話を止めた。シン……と走る沈黙。何を言われたのかだんだんと理解し始めたルシファーが手で顔を覆いながら、「用事を思い出した」と言ってその場を離れたあとで、「嘘でしょ!?毎日!?」とアスモが叫んだのは言うまでもない。
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