これが僕らの四月馬鹿(五い)「兵助ー」
ガラリと自室の扉を開くと目に飛び込んでくる、机に向かう同室の後ろ姿。チラッとこちらを見てどうしたんだ?と訪ねる兵助の顔を見てニヤリと笑う。
「今度の実習、俺たちの潜入先豆腐が有名な茶屋だってさ!」
よかったなと言って相手の反応を待つ。
無類の豆腐好きの同室のことだからきっと何かしら食いついてくれる、そう思ったが反応は「そう」とむしろ淡白なもので、逆に勘右衛門の方が慌ててしまった。
「……?勘右衛門?」
何、この手。と兵助は作業をしていた手を止めて見上げる。らしからぬ反応を受けた勘右衛門は思わず額に手を置き、熱がないかの確認をとってしまっていた。
「いや、兵助が豆腐に反応しないなんて、熱でもあるんじゃないかと思って」
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