愛の化身side:R
迎えに来てくれると言うので、事務所のビルの入口で待っていたら道路脇に止まった車から兄が出て来て困ったように笑った。
「そんな暑いところで待ってなくとも良かったのに」
助手席に座れば、後ろにいた妹が身を乗り出して来る。
「小兄、おめ」
「そうじゃった。ヒデオ、お誕生日おめでとう」
*
「スーツはアニキが見立ててくれた。花はヒマリから。同居人にも見せるようにって」
そうスーツ姿のまま花束に顔を寄せて匂いを吸い込む姿はさながら天使のようで。顔がいい男は何をしても様になる。
それで帰って来てもそのままの姿で、夜行性の同居人達の寝起きを待っていたらしい。
彼の家族との昼の祝いの席の話を、ジョンもメビヤツも嬉しそうに聞いている。
「愛のおすそ分けだな」
その姿に見合った美しい心の持ち主に今宵も夢中にさせられる。
「愛って?」
「君のことだよ。お誕生日おめでとう、ロナルド君」
side:D
狭い場所ではあるが住めば都、住めば我が城。
コタツを出すにはまだ早く、寒いという理由をつけてソファーで身を寄せ合うのを楽しむ季節。
所狭しと並んだプレゼントを愛する使い魔と喜びを分かち合いながら開封する。
隣ではわかりやすく自分のプレゼントが見つかるのをソワソワと待ち望むロナルド君。その顔だけで十分、今宵も面白くなることを物語っている。
*
「おや、今回はちゃんと買えたのか」
トマトジュースのボトルを見下ろしてドラルクが眉を顰めた。
「誕生日プレゼントに面白さを求めてんじゃねぇよ」
反論するものの、やっぱりもっと奇抜なものの方が良かっただろうかとグルグル思考が後ろ向きになる。
「プレゼントは嬉しいよ。ただ、トマトジュースがわからなくて売り場を何往復もした挙句、店員さんに尋ねたら目の前にあって恥ずかしい思いをしたロナルド君の姿を直に見れなくて残念だったな」
「ふざけんなクソ砂、何で知ってるんだよ!?」
半田か、半田だろうな。後で殴る。
「だって君が私のことを考えてプレゼントを探してくれたことが何よりも嬉しくてね。それに今夜は名前を呼んでよ。それくらい、いいだろう?」
それは特別な名前、愛された子に付けられた祝福の音。
お前が嬉しいなら俺も嬉しいよ。お前がいるだけでこんなにも毎日が喜びで満ちていく。
「お誕生日おめでとう、ドラルク」