トレイン夫妻のある朝トレインの朝は早い。結婚当初は慣れなくて、よく寝坊をしていた。
それがどうだろう、一年、二年と過ごすうちに早起きにも慣れ、今となってはトレインより早く起きている。
新聞を取りリビングへ行けば、定位置にいるルチウスが足元に寄ってくる。思えばルチウスに懐かれたのも早起きをするようになってから。結婚してから撫でさせてはくれたものの、今のように足元にきてジャレることはなかったように思う。
冷蔵庫から卵とウインナーを取りフライパンへ。弱火にして蓋をして、リビングから庭に出てミニトマトとベビーリーフを収穫し再びキッチンへ戻れば、トレインが起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
それ以上の会話はないが、妻を見るトレインの目は優しい。
リビングの定位置に置かれた新聞を手にすると、タイミングよく出てくるコーヒーにも。
「ごめんなさい。豆を切らしてしまっていて今朝はインスタントなんです」
「構わないよ。君が煎れてくれる物は美味しいからね」
「ありがとうございます」
再びキッチンに戻りソテーウインナーに目玉焼き、フレッシュな野菜にロールパンを二つ。トレイン家の定番朝食メニューだ。
「今日は補習の生徒がいてね。帰りは少し遅くなる」
「晩ご飯はどうされます?」
「頂くよ」
その瞬間、彼女の頭の中には温め直しがきくメニューが開く。だからと言って苦ではない。毎回残さず食べてくれる事も、美味しいと言ってくれる事も知っているから。
「じゃあ行ってくる。戸締まりはしっかりするように」
「はーい。行ってらっしゃい」
スキンシップはあまりないし会話も多くない。それでも周りの夫婦よりは幸せだと思うし、永遠を誓った相手。心地よいのは惚れた弱み、だろうか。