きわしの温泉旅行編「温泉に行こう。」
簡潔である。そして直球だ。
絵文字も飾りも何一つない、絵面だけなら実に色気も素っ気もない。スタンプや絵文字でテンポよく感情を表現するメッセージアプリに慣れた若者世代であれば「マルハラ」だと感じかねないような。
それでも本人の人柄をあらかじめ承知していれば、文字にはパッションピンクの色がつき愉快に踊り、句点の後には特大のハートマークがついているように感じるのだから、人間の脳とはかくも不思議なものだ。
「いきなり何スか、と」
ぽん、と。前置きなく提示された計画に対して至極最もな疑問形で返すと、忍者くんいま電話して平気? とまっとうに社会人をやっている、大人としての気遣い溢れるメッセージが届く。こういうところは実に仕事のできる大企業のサラリーマンらしい。例え第一声が序破をすっ飛ばして急しかない突発的なお誘いであっても。
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