マスターは語る ロイヤルブレンドを好む背の高いお客さんはそこそこの常連です。読書がお好きなので、空いていれば窓辺の席で過ごしていました。ある日、小柄な男性が降り出した雨に慌てて入店されて、窓辺のお客さんは本から顔を上げて目で追いました。珍しいことです。やや目つきの鋭い小柄なお客さんがカウンターに落ち着き、セイロンティーを少し変わった持ち方でお飲みになっていると、窓辺のお客さんが立ち上がり歩み寄りました。それが、ビルの隙間に埋もれそうな私の喫茶店での彼らの出会いです
彼らは待ち合わせや休憩に何度も来店し、会話を弾ませるわけではありませんが親密さを濃くしていきました。そう、熟成させた豆のように。
半年ほど経った頃でしょうか。エルヴィンさんは緊張した面持ちでリヴァイさんを待っています(失礼ながら会話の端々でお名前を知りました)。たまにジャケットのポケットから取り出した小さな箱を見つめていましたが、カランとドアベルが鳴ると慌てて隠します。
私は心から立ち会いたくなりました。
今は喫茶店のマスターですが、あの世界では実は司祭だったのです。