秋の歩幅「ルキノさん、コーヒーが美味しいカフェをみつけたので行きませんか」
ルキノの私室が無遠慮にノックされれば、許可をする前に聞き慣れた声が部屋に響いた。
「私は入室の許可をした覚えがないが」
「僕と貴方の関係でしょ。そのカフェはビスコッティもおいしいと評判ですが」
いかがですか?、と火傷痕で引き攣った非対称な笑顔でルキノをカフェへと誘う。ルキノが読み進めたページは全体の半分、軽い昼食を数時間前に取っただけで胃袋を意識してしまえば空腹のような気もする。すぐに返事をするのも面白くはないと、伸びた鉤爪を顎にあて考えるふりをするもノートンの笑みはかわらないまま。
「付き合おう」
ルキノの返事と共に、部屋を出ていくノートンに付いてこいということだろう。デートの誘いをしたにも関わらずエスコートをしないとは、テーブルマナーだけではなくそのようなマナーも必要なのかと、今後のカリキュラムを再考しなくてはいけないらしい。
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