無題六月二十五日。多くの人にとっては、毎年巡ってくるなんてことない一日だ。
しかし稀咲鉄太にとっては違う。一年の中で一番大切な日である。
花垣武道。泣き虫のヒーロー。ずっとあこがれ続けた鉄太のヒーロー。そして、あの手この手を弄してようやく手に入れた恋人である。
そんな武道の誕生日こそがこの日である。鉄太は初めて共に過ごす武道の誕生日のために準備してきた。それはもう試行錯誤したのだ。
「稀咲ぃ~、タケミっちだぞ?コーラとポテチで祝うのが一番喜びそうじゃね?」
呆れたように言う修二を一蹴し、鉄太は腕時計を用意した。シンプルだが良いものだ。
「猫に小判、タケミっちに高級腕時計…」
修二のことは叩いておいた。
「いってぇ‼ひでぇよ、稀咲ぃ~」
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