メモ: ベアフットサンダルはサンダルではない「先生」
「………」
「先生?」
「………」
「リーズニングセーンセ?」
「黙れ」
「やっとこっち向いた」
「………」
「ああ、残念」
ぱき、と筆の先が折れる。これで何本目だ。深呼吸をして引き出しからストックを取り出す仕草は慣れてしまった。
スヴェンガリは探偵を職業とするリーズニングの事務所によく来る。といっても依頼があったのは最初の一回だけ。それ以降は多忙のリーズニングにちょっかいを掛ける為だけに顔を出すのだ。
「先生はつれない男ですね。つまらない」
「なら来ないでくれないか」
「貴方が入れたのに」
「入れなければドアを壊して好きに出入りしてやると脅したのはお前だ」
「そうですが?ああ、先生。私は寂しくて死にそうだ」
「此処以外で好きに死ぬといい」
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