n番煎じ彼シャツ 立香としてはいずれ以蔵と結婚したいし、以蔵もそのつもりで動いているのが察せられる。
しかし――だからこそ、まだ馴れ合いたくない。
今しか味わえない恋人同士の時間がある。甘い恋慕を持ち寄って、ベッドの中で分け合う。隙間なく抱き合い、互いの熱を感じる。
おそらく、生活を共にしては素直にそうできなくなることもあるだろう。
だから、まだ所帯染みた振る舞いは控えている。
たとえば、着替えを持ち込むような。
常備するのは、歯ブラシやメイク落としくらいに留めたい。
そんな風に思っている。
さて、今宵も立香は以蔵に愛された。
情事の後始末をした以蔵は、くったりした立香を己の胸に引き寄せて腕枕をする。
そのたくましい感触が愛しくて頬を寄せた立香だったが、ふと肌寒さに襲われた。
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