「隊長って、本当に変わったものが好きですよね~」
背景に花背負っちゃってる系男子がずるずるとマシマシとんこつラーメンをこれまた優雅にすすりながら言う
「へんな君には言われたくないんだけど」
「いや。僕は須らくエッティなものは好きですけどね、それは全部が好きだからな包括的だけど、隊長の場合は好きになるのが局地的ですよね。」
「そうかな?」
「だと、僕は見てるって話しなんですけどね。でも人気有名ゲームはほぼやらないのに
ゲーム雑誌にもほとんどレビューがないクソゲーにほど突っ込んでいくでしょ?」
「私の事、よく見てるねぇ」
「人間観察ほど面白くてエッチなことは無いと言うのが僕の持論なんで」
「…そういった目で私を見てる、と?」
「気持ち悪いこと言わないでください。セクシャルハラスメントダメゼッタイ」
「どっちが?!」
なんてやり取りをしたなぁ、なんてデスクに詰みあがっている父からの郵便物
―その中身はほぼ釣書なのだけれど―を目にして現実逃避として思い浮かんだのが先ほどのへんな君との会話だったのだけれども
「実父よりもへんな君の方が私の理解力が高いってどういうこと?」
言いながらもぱらりと厚紙をめくると美貌と経歴を兼ねそろえたお嬢様が微笑んでいる写真にさらに溜息一つ
ワルド・ドラルク(38)
自他ともに自覚している家柄よし・経歴よし・容姿よしな上に
困ったことに何でもできてしまう系男子だった。
勉強でも芸術系でも運動でも(芸術系については少々、運動系については多少の得手不得手はあるとしても)
手を伸ばした先の物を掴めなかった事はなかったので
10の頃には両親が喜んでくれれば、それだけで私は嬉しかったのだけれど
15の頃には家庭教師である師匠は眉をしかめながら『お前にはいつか壁にぶつかる日がくればいい』と言ったけれど(それが彼の親心であるのは理解している)私にはいつかくる壁が楽しみでしょうがなかった
それでも壁という壁に立ちふさがれることもなく20を迎えた私は、少々倦んでしまったのだけれど。
『楽しくないのです』
偉大な祖父にだけは零した言葉に、ぽんと頭をなでる優しい指と、穏やかな言葉
『…じゃあ、楽しいことを探そうか』
一つ一つやりながら打ちのめされて
一つ一つ取り上げながら、捨てて行って
*******
なにも好きじゃないドちゃんが
何も欲しくないドちゃんはさぁ、クリアできるかできないかって言ったら
クリアできる前提がないクソゲーが好きなんじゃないかなぁ?なんて思ったり
裏道もバグも不親切設計も、そういったものが楽しいタイプだし
だからこそ
Δロくんっていうバグみたいな存在を欲しがるって言うことになるといいなぁって
(欲しがるとなったら一直線でのめりこむタイプだ・・・)
(お労しや、Δロ君)