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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
    リアクションとても嬉しいですありがとうございます

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    mitotte_kazu

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    捏造が過ぎるイルしる

    潜入※新生通りにならずクリスタルブレイブがきちんと機能しているif世界線
    ※暁月後辺りの話



     ウルダハで最近話題の風俗店があるらしい、と不滅隊隊員がヴィエラに小声で耳打ちする。曰く、あのエオルゼアの英雄と同種族の豊満な体躯を堪能できる店と謳って、言葉にするのも憚られるようなことをさせてくれるらしい。英雄以前に女性であることを配慮している様子の隊員が仄めかしてはくれているものの、所謂本番行為まで暗黙で許されているそうだ。あぁ、と間伸びした声で彼女が手を叩く。
    「繁殖能力低いもんねぇ」
     呑気な物言いに肩すかしを喰らった隊員の前で、彼女は顎に手を添え考え込みだした。
    「珍しい種族を揃えるのには広い繋がりが必要になるので、他のグランドカンパニー等と協力しながら捜査を進めている状況なのですが……」
     英雄と呼ばれる人は平凡な自分と違うものだと困惑と尊敬を半々に抱きながら話している隊員にねぇ、と彼女が声をかける。
    「その店、どこにあるか教えてもらってもいい?」
     数回瞬きをして律儀に教えてくれた隊員にありがと、と礼を述べて手帳に素早く店名や住所をメモした彼女がそれじゃ、と不滅隊本部を後にしようとするのをタイミング良く帰還したピピンが制した。

    「止めて良かった……ッ!!」
     全力で呟いたピピンの前でヴィエラは唇を尖らせていた。
    「それぐらいなら、私一人でも大丈夫だって」
     知らんけど、と呑気に呟いた彼女にピピンは再度頭を抱える。これまでの経験があるとは言え、単身であのような場所に乗り込もうなどとは到底許可出来る事ではない。かといって自身の制止では彼女を到底止められないのを彼にはわかっていた。そわそわと落ち着かない様子の彼女は解放され次第件の場所に飛び込まんばかりで、どうしたものかと彼は額に添えた手が離せなかった。と、飛び込んで来た隊員が彼に耳打ちし、頷きながら聞いていた彼が複雑な表情で口を開く。
    「改めて、協力の御依頼をさせて頂きます」
     恭しく頭を下げた彼曰く、摘発できそうな材料を幾つか確保は出来たものの、逃げられないように一網打尽にする機会などもこれまではなかった。今回包囲し対応できる人数や物資なども揃った状況で突入できなくはないため、力を貸してほしいとのことだった。
    「なるほど」
     規模や店内の様子について説明する彼に頷き、彼女が真顔で呟く。
    「つまりデコイって事ね」
     英雄自ら囮役を志願してくるとは。静かに絶句するピピンを他所にじゃあ髪形とメイク変えて、服とかどういうのがいいかなと彼女は至ってマイペースだった。先程よりは落ち着いた様子の彼女が時間などについて確認して来たので、まだ必要な人員がウルダハには集まってはいないが本日から突入準備を進めて行くことは可能だと答えた。
    「じゃあ、準備できたらまたリンクシェルででも報告しようかな」
     あんまり接触しない方がいいよね、と考え込んだ彼女の聡明さに頷いて返し、無理だけはしないで潜入前には確認を取ってもらうよう伝えた。

    「……よし」
     鏡に写った自分の姿にヴィエラは頷いて呟いた。髪型や髪色も普段と大きく変え、化粧もやや濃く強めにして印象を変えてみたが我ながら良い仕上がりに見えた。似てる、と言われてもファンなのでと誤魔化せるんじゃないかと緩めた頬を引き締め、用意してもらっておいた服に袖を通す。冒険初心者でも入手しやすいそれっぽい服にも化粧や髪型などは浮いた様子もなく、これなら大丈夫だろうと真っ直ぐ鏡の中の自分を見つめた。
    「大丈夫、」
     言い聞かせるように呟き、目を閉じて深く息を吐く。とりあえず暗躍する組織を上手く捕まえる事、あとは被害者でもあるキャストのヴィエラ達を無事に保護する事に専念する、と目標を再確認してリンクシェルに手を添えた。
     聞いていた施設はパールレーンから少し外れた、薄暗い場所にあった。あからさまに怪しいと抱いてしまった不信感を隠し、うろうろと店の前を歩いてみる。と、用心棒らしきルガディンがこちらを覗き込んできて目を丸くした。こういう時は、と彼女は反射的に手を振って愛想良く笑いかけてみる。
    「ここって〜、まだ募集してたりします?」
     間伸びした声を意識しながら首を傾げると、面倒そうに頭を掻いたルガディンは一度店内に引っ込んだ。少しの間を置いて艶のある髭を湛えたララフェルが出て来る。
    「やぁやぁやぁ、ようこそ!!」
     大手を広げて大股で歩み寄ってきた彼が弾んだ声で彼女を歓迎する。さささ、詳しい話は奥で、と促しながらさりげなく彼女の大腿部に手を添わせた彼にこいつ、と少し腹を立てながらも臆面に出さず、はぁい、と弾んだ声で返した。彼に先導されて進んだ店内は甘ったるいお香の煙が漂い、布や壁で仕切られた向こう側からは他人の営みの気配を感じた。うわぁビンゴ、と心の中で顔を顰めながら、面接室らしき奥の部屋まで連れてこられる。

     用心棒らしきルガディンが持ってきたお茶を机に置いてきたのに対し、どうも、とヴィエラは礼を述べる。秘書的な事も兼用してるのね、等と呑気な事を考えながらカップの中に視線を向ける。鮮やかな色のハーブティーからは甘酸っぱい香りが漂い、いかにも女の子受けが良さそうだった。
    「で、ウチで働きたいと!」
     両手を広げた髭のララフェルは相変わらず弾んだ声で尋ねてきた。そうなんです!と負けないぐらい声を上げて、胸の前で拳を握る。
    「可愛い服とかいっぱい買いたくて冒険者始めたんですけどぉ、あんまりお金稼げなくって〜!ここならヴィエラ限定で手軽にめっちゃ稼げるよって酒場で聞いたんです〜!!」
     彼らのような男性が好みそうな、考えの浅い話し方と内容を意識しながらアピールする。ララフェルは腕を組み、うんうんと頷いていた。
    「……で、君の強み、というか……魅力的な所ってどこだと思う?」
    「胸がおっきいところです!」
     いきなりだけど、と前置きして投げかけられた質問に間髪入れず返した。目を瞬かせたララフェルに片手を勢い良く挙げて胸を張り続ける。
    「なので、可愛い系よりセクシー系の服のが似合うと思ってます!!」
     我ながらアホっぽすぎると内心思いながらも発した言葉に、ララフェルが嬉しそうに拍手し出した。素晴らしい、と大袈裟に感動した声色で彼は続ける。
    「ウチの大きな特徴としては、売上の歩合制を取っていてねぇ、」
     つらつらと長ったらしく行われた説明を要約すると、売上が多ければ給料も増えるからスタッフ達はどんな手を使ってもいい、というものだった。なるほど〜、と返しつつ心の中で毒づいてしまう。
    「じゃあ、めっちゃ頑張ったらめっちゃ稼げるって事ですね!?」
     身を乗り出して確認してみると、その通り!と返された。その通りじゃねぇだろ、と思いつつ、渡された書類に用意しておいた偽名などを記載していく。

     とんとん拍子に話が進み、さらっと目を通した誓約書にサインを終え、部屋の隅の扉を指差された。首を傾げたヴィエラにララフェルが更衣室だと伝えてくる。
    「さっき言ってただろう?セクシー系の衣装、用意しておいたから」
     着替えろ、という事だろう。うわぁ、と内心顔を顰めつつ楽しみ〜、など相手の望みそうな言葉を返した。思っていたより厳重かつ施錠が出来る扉に小さく驚きつつ、室内を見渡す。一層強く感じられるお香の匂いに包まれ、隅に置かれた籠からはみ出ている布が恐らく件の衣装だろう。淡く透けている生地から男受け良さそう、などと思ってしまう。一応つまみ上げて見ると服や布と形容するより、
    「……紐?」
     思わず呟いてしまった言葉に扉の向こうから噴き出す声が聞こえた。声を上げて笑っているのはララフェルだろう。そんな笑わないでくださいよぉ、と返しておくと、ごめんごめん、と軽く返される。流石に着替えるのには抵抗もあるが、そもそも着方すら危うい衣装を矯めつ眇めつしていると、ドアの外から溜息が響いた。
    「はー……笑った笑った」
     君面白いねぇ、と話しかけられてそうですかぁ?と反射的に返してしまう。
    「あのほら……エオルゼアで活躍中の英雄殿にも似てるなぁって思ったんだよねぇ」
     ねっとりとした口調のララフェルに眉を顰めつつ、よく言われるんですよぉ、と笑っておく。
    「メイクとかはちょーっと意識したりしてますけど〜」
    「そうなの?流行ってるのかなぁ、英雄メイク」
     ドア越しの呑気な声にふふ、と笑ってそーかもですねぇ、と適当に返していると、
    「飲まなかったね、お茶」
     急にララフェルの声の距離が近付いた。

    「喉、乾いてなかった?」
     先程までとは異なるララフェルの声のトーンにヴィエラの背筋にひやりと汗が伝う。何か答えないとまずい、と彼女が口を開いた瞬間、ドアを挟んだすぐ近くに立っているであろうララフェルがまぁそうだよね、と呟いた。
    「こんな所で出されるモノなんて、迂闊に口にするもんじゃないよね」
     正解正解、と乾いた拍手の音が響く。催淫剤入りです、と淡々とした調子で彼が続ける。
    「流石英雄殿だ、警戒心とウルダハでの立ち振る舞いは大したものだねぇ」
     違う、と否定するべきだが声が出ない。喉が張り付いたような感覚と、視界が歪み出す。倒れそうになり、更衣室内に下がった天幕を反射的に掴んだ。
    「似てるもなにも本人だろ?客商売やってるララフェルはな、色んな顔見て覚えて金稼いでんだよ」
     顔が広いと大変だねぇ、と揶揄するような口調で彼が少し黙り込む。こちらの様子を伺っている、と天幕の中に倒れ込みかけた彼女はなんとか壁にもたれて耐えた。
    「まぁそんな警戒心にも、勿論対策済みだよ。空気中の麻酔薬には太刀打ちできないだろうし、」
     強く焚かれたお香の意図に気付いた彼女が奥歯を噛んだ。それは無理でしょと心の中で叫びながらずるずると床に崩れ落ちる。流石にそろそろ落ちたかな、と呑気な呟きの後に、ドアが開いた音が頭上から聞こえた。これは高く売れそうだ、等と言いながらぺたぺたと頬や唇に触れてくるララフェル特有の小さな掌が酷く不快だった。
    「大人しくお茶飲んでおけば、気持ち良くなってお互い楽に事が進んだんだけどねぇ」
     軽く数回手を打ち鳴らした髭のララフェルに応えるように彼の背後から用心棒が近付いてくるのを見て、彼女の意識は途切れた。

     ヴィエラが目を覚ますと下着姿でシーツをかけられた状態で寝台に臥していた。目を覚ましたといっても頭は鈍い痛みで霧がかかったようで、身体は酷く重かった。おはよう〜、と、呑気に目の前に座ったララフェルが少し離れた場所にある椅子に腰掛けている。胸倉を掴んで殴ってやりたいところだが、生憎身体の自由はまだ効いていなかった。ウルダハは本当に良い所だよ、と彼が口を歪ませる。
    「病院に錬金術師ギルド作の高品質の吸入用麻酔薬を寄付したい、等と一筆添えたら大量入荷もさせてくれるし」
     フロンデール薬学院様様だ、と弾んだ声の彼と錬金術師ギルドマスターに舌打ちをつきたくなるが、発語すら困難な状態なので大人しく横たわっているしかできなかった。品質のおかげで身体に悪影響もなく覚醒できる!と大袈裟に両手を挙げた彼を蹴飛ばしてやりたいがまだ身体は動いてはくれない。さて!と開いた手を勢い良く叩き、彼はにんまりと微笑む。
    「商売の時間だ!お客様をお招きしないと!!」
     良く通る声に応じる様に部屋の隅に待機していた用心棒が奥へと引っ込んだ。くったりと垂れた彼女の耳をつまみ上げた彼がねっとりと囁いてくる。
    「以前より英雄殿への熱い想いをウチにぶつけてくれている太客でねぇ、粗相のないようにしてくれよ?」
     自由に動かない身体でどうしろと、と思いながらも確実に危機が迫っている事を再認識する。早く動いてくれ、と懇願するも指先ひとつ意のままに動いてはくれなかった。そんな彼女の焦燥も逼迫も構わず件の太客が室内に通される。ターバンを巻き俯いた目元は良く見えないが体格の良いヒューランの様だった。見知らぬ輩に抱かれるのは嫌だな、と思いながらもヒューランならまだマシかな、など取り止めのない事が頭に浮かぶ。いやそんな事考えてる場合じゃ、と近付いてきたヒューランと目が合った。

     その目に見覚えがある、と思うがまだ薬が抜けきっていない頭ではその心当たりに思い至らない。そんなヴィエラから目を離し、室内にまだ滞在している髭のララフェルにヒューランは振り返り、本当に英雄殿ですね、と声をかけた。
    でしょう!と嬉しそうに両手を広げたララフェルにヒューランが頷く。さて高値で買って頂き恐縮なのですが、と揉み手をしながらヒューランにララフェルが近付いてくる。
    「英雄殿との既成事実の証人として同席させてもらうのは、本当に良かったんですね?」
     良くねぇよ!と声を張り上げたくなる馬鹿げた提案に目を数回瞬かせた彼女を他所に、勿論です、と穏やかな声でヒューランは答えた。お前も許すな!と目の前の男にキレそうになりながらも指先はまだ拳を握る事すら出来なかった。
    「その、最中を見られるのには少し抵抗はありますが……」
     照れたように頬をかいたヒューランにお前よりこっちが嫌ですが!?と声を張り上げたくなるが呻き声しか出せなかった。それは勿論、と楽しそうに手を叩いたララフェルにヒューランが続ける。
    「そうですね、あちらの部屋で待機してもらう形でしたら?……声ならまだ恥ずかしくないので……」
     入り口から離れた位置にある扉をヒューランのたくましい指が指し示した。浴室ですか、と呟いたララフェルにヒューランが頷く。仕方ないという表情を浮かべ、言われた通り翌日に向かうララフェルに、
    「彼もお願いします」
     穏やかだが拒否は許さない、という圧を感じる声でヒューランは用心棒に手を翳した。渋々と浴室に収まっていく二人に客の強さとこれまでどれだけ使ってきたんだと不信感を抱いてしまう。そんな彼女の頬をヒューランの手がそっと撫でて来て、とうとうやられちゃうのか、等と彼女は思った。

     すり、と頬から首にかけて柔らかく触れて1ヶ所でヒューランの手が止まる。唾液は飲み込めますか、と確認され、言われた通りに試してみる。こくりと彼女の喉が動くのを確認した彼が少しお待ちを、と穏やかで先程よりも柔らかい声で囁いてきた。この声も知ってる、とヴィエラは必死で頭を働かせる。声も目もその触れ方も知っているのに、ともどかしく思う彼女を優しく彼は抱き起こし、壁にもたれかけさせるように姿勢を正した。まだ身体は十分に動かないが姿勢の保持はできるぐらいまで回復してきていたようだった。部屋の隅に用意された水差しから注いだ水を含ませようとするが、それが出来るほどはまだ回復できていなかった。短く息を吐いた彼が一口含んだ水を口移しで飲ませてくる。微かに人肌に近‪い温度にはなっているものの、久しぶりの水分なのもあって何故か美味しく感じられた。唇を離した彼の服の裾を摘み、込められる力で引っ張ると意図を汲んでくれたらしい彼は彼女が満足するまで水を飲ませてくれた。ただ口移しで水を飲んでいる間も大人しく待っていてくれているララフェルや用心棒に静かに感心していると、彼も浴室の方に目を向けていた。鋭い視線で彼女を支えていない方の手を自身の耳に添え、小さく彼が何かを言っていた。ヴィエラの聴力のおかげで、無事を確認、突入しろ、と確かに聞き取れた。

     その後の展開は迅速で呆気なかった。出入り口全てを封鎖していた不滅隊やクリスタルブレイブの隊員達の突入により、店のスタッフは全員ほぼ無傷で確保、キャストとして働かせられていたヴィエラ全員も無事保護された。との報告をターバン姿のヒューランの腕の中でシーツに包まれたままヴィエラは聴いていた。もぞもぞと彼の腕の中で微かに動いた彼女が彼を見上げる。
    「……いるべるどだ」
     今更ですか、と苦笑しながら彼がターバンを外す。普段と異なる装いや髪型のイルベルドに少し見惚れて、目を瞬かせた彼女が彼の胸板に頭を擦り寄せた。
    「いつもとちがうね」
    「変装ですからね」
     そちらこそ、とまた笑った彼の笑顔はそれでも普段のままで彼女もつられて頬を緩めた。まだ呂律は回らないものの薬も抜けてきて多少身体の自由も効くようになってきていた。もう降ろしてくれていいのに、と呟くと、もう少しだけ、と微笑みかけられた。
    「弱った英雄殿を抱き上げられる貴重な体験を堪能させてもらいながら、不埒な輩に薬を盛られた不注意さを戒めています」
     静かに諭されてヴィエラは耳を垂らし、大人しく抱かれているしか出来なかった。

     ピピンに体調や状況確認をされている間も抱き上げられっ放しだったヴィエラが二人きりになった途端に顔を跳ね上げた。その表情の険しさに圧倒されるイルベルドにそういえば、と彼女が切り出す。
    「太客って言われてたよね?先に潜入して他のヴィエラとよろしくやってたって事じゃん!!」
     噛み付いてきそうな勢いの彼女をそれでも落とさないよう優しく抱きしめながら、彼は彼女の呼吸が落ち着くのを待った。興奮冷めやらぬ彼女の名を呼び、こちらに意識が向けられたのを確認してから彼が答える。
    「……確かに、結構な頻度で店を訪れて複数のヴィエラを買わせてもらいましたが……」
     浮気者!と声を上げた彼女の額に自身の額を合わせ、彼は続ける。
    「店内やスタッフの情報収集が大半で、肉体関係は一切ありませんよ」
     後半を特に強調しながら、ぐり、と額をすり寄せてきた。その瞳は穏やかで真っ直ぐ彼女を見つめてくる。不安げに唇を噛んだ彼女に微笑みかけた。
    「……そういう部分で、貴女に似た聡明なヴィエラを優先的に指名していましたし、その内英雄に似たヴィエラを、とお願いするようにしていました」
     万が一こういう事態が起こっても優先的に対応してもらえるように。堪えきれなくなった彼女が彼の首に腕を回す。不意を突かれバランスを崩しそうになった彼がなんとか堪え、彼女を落とすまいと支えた。細腕に力を込め抱き付いてくる彼女の背中を撫でて名前を呼ぶと、彼女も額をすり寄せてくる。
    「その格好だと冷えるでしょう」
     彼女の着ていた服を見つけるより大層な代物がごろごろ出てくる店内で、お気に入りの装備も持参していなかった彼女はシーツの下で今も下着姿だった。むくれた表情を浮かべた彼女がこくりと頷いたのを確認した彼が耳元で囁く。
    「とりあえず、暖かい場所にでも行きましょうか」
     彼女の特徴的な耳にそっと口付け、微笑んだ彼に温めてよね、と彼女は小さく呟いた。
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