空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:17「お、良いとこに来たな」
冬季休暇に伴う寮の閉鎖によって帰省を余儀なくされた高師は、閉鎖期間終了日に合わせてこの雪に閉ざされた北の大地へと舞い戻ってきた。それは、高師へと声を掛けた男達も同様だったのだろう。まだ学生の姿も少ない寮の談話室の一角を占領していた四人の男――フェルマーと篠原そして空閑と汐見。その中で高師へと声を投げたのは篠原であった。
「お前らはドイツだったんじゃないのか」
フェルマーの実家に世話になる、と寮を出た筈の篠原は高師に頷いて「どうせお前も寮が開いたらすぐ帰ってくるだろ、ヴィンがそのタイミングで戻らない訳なくない?」と笑みを含んだ言葉を返す。
「ドイツまで行くんだったら、休暇ギリギリまで向こうにいるものだと思ってただけだ」
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