君の心音の終わりまで君の心音の終わりまで
生を紡ぐ君の音。
姿が変わろうと、どれだけ歳を重ねようと変わらない、揺らがない君の生の証明。
君の胸に耳を当てて瞳を閉じれば今日も君の音と体温が優しく俺を包んだ。
「しってる?人の命が終るとき、最後まで残る感覚は聴覚らしいよ」
そんな声が聞こえた気がして瞳を開ければ、少し開いた扉の向こうからキバナがキッチンで遅い朝食を作る音が聞こえてきた。
「…………ゆめか」
ふわりと鼻をくすぐる紅茶と、スコーンの薫り。
昼間の温い布団の中で目を擦りながらくわりとあくびを一つ。
もぞもぞとシーツの中に潜り込み再び瞳を閉じたら、今度はトク…トク…と自分の心音が耳の奥に響いた。
トク…トク…
穏やかな、それでいて規則正しい俺の音。
2156