秘密のMelty Honey お付き合いをすることになって初めてキスをした。それはなんだかぎこちなくて、余韻とかムードとかそんなの全く分からなかった。
「でも、桜河はまだ15歳ですもんね」
そう言ってHiMERUはんはそのあと、いつも通りの反応しかしてくれなくなった。ホールハンズでおはようと、おやすみと、その日の一枚を送りあう以外はなんにもかわらん。
そのあとDouble Faceの活動も入ってわしの方が忙しくなり、気が付けば斑はんといる時間の方が長くなっとる。
『なあ、今のわしらって、特別な関係と言えるんか』
それはまさしく青天の霹靂でした、まさかそんなことを言われるなんて。1週間前に会った時にはいつもと変わらない様子で、一緒にスイーツを堪能して、それぞれの近況報告をして、少しだけ手をつないだ。寮の共有スペースで一緒にライブ動画を見て、その時の思いや今の感想なんかを伝えあった。
『俺は、桜河を大切にしたいのです』
大切にしているってなんや、何もせんと一緒にいることか。いや、なんもしとらんわけやないのはわかっとる。けどな、こちらにも我慢の限界というもんがあるんや。それ以上を求めていい年齢じゃないちいうのはわかっとる、けどな、最初にあんなこと(KISS)とかしといてその後一回もなしとはどういう了見かわからん。
『それはよう伝わっとる』
でしょうね賢い子ですから、ならば何か不満なことでもあるのでしょう。次に会ったときにしっかり聞いてみないといけませんね。
『では、今度お会いした時によく話しましょう、お互いの思いを』
1週間後、たまたまCrazy:Bのレッスンの後のオフが重なり、二人で出かけることになった。
「ひさしぶりやな」
なんだか周りに桜の花でも見えそうなくらいにはしゃいでいる。
「なにかご希望はありますか」
「いつものとこ行こか」
いつものお出かけコースの巡り、でもスタートが遅かったため気が付けばネオンがきらめく時間となっていた。
「なんや悪いことをしているみたいですね」
「そうか、まだまだ宵の口やろ」
「面倒ごとに巻き込まれる前に帰りましょうか」
「何かあったらわしが守ったるから、もう少しこのまま」
「それも複雑です」
「なあ、もう少しだけ話をさせてくれんか」
カップルが集う公園で同性2人並んで座る。なんだか照れ臭いが、どうせ誰も気にしてないだろう。
「桜河は俺に何かいいたいことがあるのではないですか」
「ある、ぎょうさんある」
「全部聞かせてもらえますよね」
「おん」
出会ってから今までの思いのたけをぶちまけられた、そして汚れ仕事をしている自分が本当に俺に釣り合う人間なのか不安に思うことがあることも。
「桜河、今度は俺の話も聞いてください、俺は心から愛しいと思っている。けど、それは俺の気持ちであって、そんな思いを持つことが許されるのかふと考えてしまうことがある」
「そんなん関係ない、今目の前にいるお人がわしの心を預ける相手や、だから受け入れてもらえるなら、今すぐキスしてほしいんや」
そんな大胆なことを口にしながら顔を真っ赤にしているあたり、きっとよっぽどの覚悟があったのでしょう、ならば。
ハットで隠して密やかに、アンバランスなその唇はやわらかくほんのり蜂蜜の香りがして。とろけるようだった。