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    jidenshakun

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    jidenshakun

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    ラブラブイデアズの実父捏造もの。苦手な人は警戒してねっ!そんな明るい感じではないよっ!

    #イデアズ
    ideas

    Ashngrtt🐙 今日もお母さんが怒ってる。お父さんは取り繕う為に慌てて舌を回しているけれど、そんなんじゃ全然ダメだ。その程度のご機嫌取りではもうとても取り返しようがないし、そもそも論点がずれている。

     哀れだな、と思った。この人はお母さんのことが好きなのに、その想いが実を結ぶ日は、もう来ないだろう。幼いアズールでも見て取れた。


     鼓動の音がうるさくて目を覚ましたような気がした。どうやらここは、さっきまで居た、少年時代を過ごした家のキッチンではない。そうだった、あれからもう何年も経っていて、アズールは陸に上がってNRCに入学して、それから。この部屋には陽の光があまり入らないから、まるで海の底のように、時刻を推測するのが容易ではない。なので恐らくだが、まだ外も暗い早朝だろう。

     ベッドからそっと這い出て、ぬるくなった水を飲む。隣でお利口に寝息を立てている男の、夢見を妨げたくはなかった。口がほんの少し開いていて、伏せられたまつ毛が長い。それが可愛らしくて、ほっとして、笑った。

     『アズールだって家族が離れ離れになるのは嫌だよね?おまえがそう言ってお願いしたら、お母さんも考え直すと思うんだ』

     二人きりの時、密やかに、父にそう言われた時のことを思い出した。一体何を言っているんだ、そんなことするわけがない。あなたと居たって母は全く幸せそうじゃないのに、まさか本当にそれが分からないのか?泳ぎが速くなければ、勉強が出来なければ、面白いジョークが言えなければ、他者に必要としては貰えないのに、──そう思ったから、あの時のアズールは今よりも随分と若かったけれど、それでも、取るべき行動を自分で考えて、選んだのだ。当時の選択を間違っていたとは、微塵も思わない。

     子どもの無垢なる泣き落としこそが、彼にとっては最後の頼みの綱だったのだろう。なんて可哀想な人。それ以外の何ひとつとして、彼はカードを持っていなかったのだから。実に愚か。ああ、だけど、愛していた相手と離れ離れにされることとは、一体どんな心地だったろう。

     「…イデアさん」

     起こさないように気を付けて、聞こえないくらいに小さく、名前を呼んだ。これ以上身体を冷やすときっと驚かせてしまうだろうから、もう布団の中へ帰ろう。本当はその腕の中まで入れて欲しいけれど。

     「あなたは、僕と、ずっと一緒に居られますかね」

     共に幸せに、いつまでも、というのはきっと、たった17の人魚が想定するよりずっと長い。そんな約束をするにはまだ、足りないものばかりだ。

     肩に鼻先を擦り寄せると、彼が身じろぎをしたので構えた。しまった、心配していたよりも案外、すやすやと図太く眠り続けているものだからと、調子に乗ったかもしれない。だって、先っぽだけでも触れていたくなってしまったのだ…。

     息を潜めて様子を伺っていたら、彼の反対の腕がゆっくり降って来た。その手はアズールの頭を探って見つけて、撫でたあと、背中を抱えて抱き締めた。それから、さっきまでと何ら変わらない規則正しい寝息が、アズールの頭の上でもう一度刻まれ始める。

     「……寝てますよね?」
     「ぅン、………」

     それは返事というより吐息に近いもので、確かに寝ているようだった。無意識下でも、まるでそれが自分の使命だとでも言わんばかりに、撫でて、それから抱き締めなくちゃと、そう思ったらしい。

     「…ふふ」

     嬉しいけれど、こんなにぴったり胸に押し付けられては息が苦しい。ああ、これで大丈夫。寝床を整えてほくそ笑む。アズールからもめいっぱいくっついて、抱き着いた。

     僕は努力をやめないぞ。共に生きる相手として、僕がどれだけ有用か、一生をかけて示し続けるつもりだ。絶対にこの人を手放したりしない。僕の名前はアズール・アーシェングロット。同じ轍は踏まない。

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    jidenshakun

    DONE攻めの匂いが大好きな受け、攻めのことが好きなあまり奇行に走っているところを攻めに目撃されて何してんの?(笑)😅って言われる受け それが好きなんどす…… ほんとに
    眠れない僕を置いて笑った 御伽噺では、と笑われそうなことだが、アズールは一度、部活の先輩イデア・シュラウドとバスに乗って、麓の街へ出掛けたことがある。いつか遊んでみたいねと二人で話していたボードゲームが、そこへ行けば購入出来ることを知ったからだ。ネットで注文するというのも勿論出来たが、出品元も配送日もどうにも不明瞭で、これは足を運んだ方が手早く確実に手に入りそうだと判断し、そういうことになったのだった。

     深海からやって来た人魚としては充分感動したものだったが、バスと名乗るには本数が異様に少ないらしい賢者の島のそれは、帰る頃には乗客でぎゅうぎゅう詰めだった。アズールはいつの間にか、イデアの腕の中に閉じ込められるような体勢になっていた。『ゴメン……、ゴメン、拙者のカベドンとかほんとダレトク…。』といったようなことを仕切りにブツブツと呟いて、普段以上に青い顔をしていたこと、洗濯洗剤なのか彼そのものなのか、ふわふわと香る匂いをいつもより強く感じたことを覚えている。
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    MAIKINGいずれ💀🐙になる仏゛部のふたりが仲良くなるまでの話①
    気長に続きも書けたらなと思います。
    ボードゲーム部は、文化部の中でも地味で大人しい部活である。
    軽音楽部のようにウェイな陽キャが新入生歓迎会で壇上からダイブすることもないし、サイエンス部のように変人が集って料理をしたり演劇の手伝いをしたりすることもない。所属するのはただゲームが好きなだけの目立たない生徒ばかりで、端から活動自体があまり活発とは言えないし、参加も自由だから所属してるだけの者も多い。一応新歓期間ということで活動日を増やしているこの一週間だって、部室にやって来てるのは精々四、五人だ。
    それでも平時に比べれば多い方だ。いつもは一人か二人、多くて三人。対戦相手がろくろくいないから来る者も減るという、分かりやすい悪循環である。
    もっとも、そんな所もイデア・シュラウドは気に入っていた。
    一人でひっそりと過ごしていたいイデアにとって、いつ来てもほとんど人のいない部室は貴重な安全圏だ。どうしても校舎に来る必要があるとき、あるいはデジタルではなく直接駒に触れてゲームをプレイしたいとき。イデアはこの人気のない部室の片隅で、一人盤面と向き合う。
    だから、まあ、この時期にやって来たのはイデアにとって失敗だった。
    いつもより人が多い 5310