黒田家スッポン騒動「あ、長政さん! 見てください」
にこにこと満面の笑みを浮かべる七緒とは対照的に、側に控えた使用人たちの顔色は優れず長政は疑問に思いながらも七緒の傍にある桶の中にある包みへと視線を落とした。
「また厄介事でも持ち帰ったか」
「もう、そんなんじゃありませんよ。イイモノですよ」
嬉しそうにぱらりと包みを解いた七緒の笑顔のその先にあるその物体が何かと認識した瞬間、長政は笑みを保ったまま思考を停止させた。
そこには逃げようと必死にもがくまるまる太ったスッポンがいた。
「……七緒」
わずかに低くなった声で七緒を呼べば、その声の硬さに尻込みしたのか七緒は眉を下げた。
「あの、最近長政さん元気がないって、みんな心配してて…」
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