花火の雨 大雨が降って、狡噛が楽しみにしていた花火大会が順延になった。俺は中止になったんじゃない分よかっただろうと思ったのだが、彼はそうではなかったらしく、大きく落ち込んでいた。俺はそれが珍しく、面白く、暗闇の中雨が降りつけるベランダで未練がましくハイネケンの瓶ビールを飲む恋人を見つめながら、さて、どうやって慰めるかなんてことを思っていた。
出島での花火大会は珍しくない。ここでは宗教行事と結び付けられることの多いそれは、クリスマスや新年を祝う時、旧正月を祝う時などに何発も豪華に上がった。思うに狡噛は花火が見たかったのではなく、そういう雑多な行事、東京にいては感じられない移民たちの生の生活が見たくて、それが叶わなくて落ち込んでいるのだろう。
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