記憶のない俺たち「これが列車での暮らし方だ」
「……」
なんとなく、頷いた。宇宙ステーションの事が落ち着いて列車に乗車した俺は、ここでの暮らし方を丹恒に教えて貰っていた。
「何か質問はあるか?」
「……」
「ないならいい、後は適当に見て回れ。俺は資料室にいるから、何かわからないことがあればいつでも聞きに来い」
「わかった」
最初に会った時みたいに、彼は頷いてからドアの向こうへと行ってしまった。資料室への道は前側、後ろ側の階段があるドアにはキッチン……うん、大丈夫そうだ。
「……」
どうしようかと後ろを振り返って改めて列車を観察する。赤くて長いソファ、それと手前と奥側に数人座れそうな茶色い机とテーブルがあった。左右に大きな窓があって宇宙……が見える。たくさんの星が目にいっぱい広がって綺麗だ。あとは……そう、クジラの照明が泳いでいるように見えて少し楽しい。ここは列車ラウンジという場所。全部、丹恒から教わった。
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